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ジョコビッチ戦も「打開したい」。
錦織圭の自信を裏付ける変化とは。
posted2018/05/18 11:50
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
ポジティブであることが選手にとってどれだけ大きな意味を持つのか、今の錦織圭を見ているとよく分かる。
ローマで行われているマスターズ1000大会、イタリア国際の1回戦で、試合巧者のフェリシアノ・ロペスにストレート勝ちした錦織の口はいつになく滑らかだった。
「調子が上がってくれば、この前みたいに決勝に行けたり、グランドスラムだったりマスターズでまた上の方に行けると思う。今は、試合前も楽しみな部分が多い。ランキングが下がって(マスターズは)ノーシードということもあり、チャレンジャーの気持ちで入れる」
この前とは、4月のモンテカルロ・マスターズを指している。トップ5選手のマリン・チリッチとアレキサンダー・ズベレフを連破して、準優勝。故障からの復帰過程にあった錦織の調子が急カーブで上向いた大会だ。
「トップ10に勝ってこれたのはすごく大きかった。明日当たる(グリゴル・)ディミトロフだったり、トップの選手がそんなに怖くはなくなってきている」
対戦前に「怖くなくなってきている」と踏み込んでコメントするのは、慎重な錦織にしては珍しい。そして、実際にディミトロフをフルセットで振り切ってしまうのだ。
ディミトロフとの3時間の神経戦。
「紙一重」と錦織が振り返ったように、どちらに転ぶか分からない展開、心臓の弱いファンには怖くて見ていられないような試合だった。
錦織らしい華麗な攻撃を貫いて得た勝利ではない。ディミトロフは試合序盤こそ両サイドから強打を繰り出したが、次第に軌道の高いボールとバックハンドスライスを多用、錦織の強打を封じようとした。
さすがの錦織もこれには手を焼いた。どこで強打していくか、お膳立てをどう作るか、どの球を見極めて攻めるか。強打の応酬ではなくても、これは両者が持てる力をすべて出し合う全力の攻防だった。頭の芯がしびれるような3時間の神経戦だった。