ライスシャワーについての思い出。

杉本　ライスシャワーか……あんな失礼な馬はいませんでしたね。古馬になってメジロマックイーンの天皇賞・春3連覇を阻止したと思ったら、その次のGIIIで格下相手にいいところなく敗れて。マックイーンにも失礼だろうと。

草野　ははは、確かに取りこぼしの多い馬でしたね。

杉本　ミホノブルボンが無敗の3冠に挑んだ菊花賞は私が実況を担当したんです。レース前日からブルボンが3冠を達成したら「競馬の社会には横綱がいます」と言うと決めていました。菊花賞当日はちょうど大相撲の九州場所の初日で、当時は大関に曙、小錦がいたが横綱不在だった。われながらすごくいいフレーズだと思ってぞくぞくしていたのに、勝ったのはライスシャワー。本当に失礼な馬です、なにしてくれてんねんって（笑）。

草野　名言が消えてしまったわけですね（笑）。杉本さんは私がNHKに入局した時にはスポーツ実況で活躍されていた大先輩。'76年の天皇賞・春の実況はよく覚えていますよ。ロングホークに乗った武邦彦を「名人」、エリモジョージ騎乗の福永洋一を「天才」と表現され、2頭の最後のデッドヒートでは「名人か天才か、天才か名人か」。聴かせていただいて、すごく興奮したのを覚えています。

杉本　当時は変なことばっかり言ってましたね。あのときは自分で言うのもなんですが、体全体ほとばしるような声で実況してました。あの天皇賞のゴール前では、馬と一緒に走ってしまってエリモジョージがバテるのと同時にこちらもバテた（笑）！