炎の一筆入魂BACK NUMBER
沢村賞の才能秘める広島・岡田明丈。
異常に低い被打率を誇る球質とは?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/05/14 12:15
4月25日のDeNA戦での先発で「力感」のイメージをつかみ、一皮むけた感のある岡田明丈。
「自分が投げ切れたか、投げ切れなかったか」
続く5月3日巨人戦(マツダスタジアム)は8回3安打2失点、9日DeNA戦(マツダスタジアム)は完封目前で失点も8回2/3、1失点と抜群の投球を続ける。
確かな手応えを感じているものの、それが過信にはなっていない。被打率1割台も「そうなんですか。打たれている感覚しかない。毎回ランナーを出している気分なんで」と苦笑いする。
リーグワースト15位タイの13四球を与えている制球面は、課題の1つでもある。
「打たれた、打たれないは別で、自分が投げ切れたか、投げ切れなかったか」
まだ自分との戦いの中にいる。
自分の投球ができれば、抑えられる。
「自分の完璧な投球、配球ができたときはあまり(打たれた記憶が)ないですね。なんで打たれたんだろうというのはない」
絶対的な自信は揺るがない。
「ただ立っていればいいわけではないと思う」
のほほんとした印象もあるが、野球人としての探究心は強い。
スコアラーが持つ映像データを自分のパソコンで確認。自分の感覚と客観視したイメージをすり合わせる作業は怠らない。
また、入団1年目の一昨季、打率7分4厘に終わったことで打撃の個人練習を始めた。
「少しでもチームの流れに加われるように。バントでないケースでも、ただ立っていればいいわけではないと思うので」
オフには30分間、1人でマシンを相手に振り込んだこともあった。昨季は1割2分8厘に打率が上昇し、広島投手陣最多の8打点をマーク。相手投手に警戒心を与えるため、映像で見たメジャーリーガーをまねた構えにする工夫もある。
投手として、野球選手として、自分自身が「未完成」であることを自認し、より高い理想の先に「完成図」を描いていることこそが最大の魅力なのかもしれない。
ファンは、岡田のその先にある未来が気になる、「ツァイガルニク効果」で引き寄せられている。