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ダニエル太郎がついにツアー初V。
優勝導いた「格闘家メソッド」とは? 

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吉谷剛

吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani

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posted2018/05/10 11:30

ダニエル太郎がついにツアー初V。優勝導いた「格闘家メソッド」とは?<Number Web> photograph by Getty Images

TEB BNPパリバ・イスタンブール・オープンのトロフィーと25歳のダニエル太郎。日本男子史上4人目となるツアー優勝である。

その独特の練習法「Ido Portal」とは?

 4月の米国でのクレー大会は結果が出なかった。

 ヒューストンでのATP250大会、サラソタでのチャレンジャー大会はともに1回戦敗退。

 その後に予定していたタラハシーでのチャレンジャーは出場を取りやめ、両親が住むアムステルダムでトレーニングをすることにしたのも功を奏した。

 今季の節目でサポートをしてくれた父ポールさんのもとで体も心もリフレッシュ。仕切り直しで欧州のクレー大会に入ることにした。

 トレーニングの様子は本人のツイッターで動画がアップされたが、その映像を見て「ピン」ときた。体操競技で使う吊り輪にぶら下がり、鉄棒では全身のバランスを取りながら開脚して懸垂をする姿。これはポールさんが息子の太郎に伝授したトレーニング法「Ido Portal」の一部だったからだ。

 この聞き慣れない練習法は、総合格闘技団体「UFC」元王者のコナー・マクレガーが実践しているメソッドで、筋力増加ではなく、体のしなやかさや動きの柔軟性を身につけることに重点を置いている。ヨガやブラジル柔術、カポエイラの要素も含まれ、体の潜在能力を引き出すことを目的としている。

 息子から「トレーニングおたく」と言われるポールさんに、3月のマイアミでこの練習法の狙いを聞いていた。

優勝スピーチでは「父親に感謝したい」。

 ポールさんは「僕はスポーツの勉強をすることが好きなので、いいなと思ったものは太郎にも薦めている。自分の体の動きを知ることはテニスにも生かせる」と語った。

 元世界1位のジョコビッチを破るなど今年に入っての躍進はダニエルが長年積み重ねてきたものの成果だが、7歳でテニスの世界へ導き今でも息子を支える両親の存在が大きかったのも確かだ。

 父親から教えてもらったトレーニング法で自分と向き合って臨んだ今大会。タフな赤土で、持ち味の粘り強いストロークを支えたのは「Ido Portal」で培った強くしなやかな肉体だった。

 ツアー初タイトルという大きな勲章を手にしたダニエルは、コート上での優勝スピーチで「父親に感謝したい」と率直な気持ちを打ち明けた。

【次ページ】 「あまり焦らないでずっといきたい」

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