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メドベデワと羽生結弦が同門へ。
「最強チーム」で北京五輪に挑む。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/05/09 17:00
ルール変更はメドベデワにとっても追い風となる可能性が高い。北京オリンピックへ向けて最高のスタートを切った。
4回転の種類を抑えた方針で成功。
オーサーのコーティングの特徴は、複数のコーチによるチーム制であることだ。スケーティング専門のトレーシー・ウィルソン、ジャンプ指導のジスラン・ブリアン、振付師のデイビッド・ウィルソンらをはじめ、スピンの専門コーチや、ペア種目の指導者、ジャンプの補助具ハーネスの専門コーチまでいる。
それぞれのコーチが自分の仕事に責任と誇りを持って指導するスタイルのため、誰もがやる気満々。オーサーは、各選手の方向性を見極め、総合指導をする。
そして現在、チーム・ブライアンが大成功している最たる理由は、オーサーが現行の採点方式を熟知していることだ。
男子はここ2年、「真4回転時代」とうたわれ、多くの若者が得点の高い4回転ルッツや4回転フリップに挑戦し、3種、4種もの4回転に手を出すようになった。
しかしオーサーは頑なに「4回転はトウループとサルコウの2種類で十分。むしろトータルパッケージが重要。高い質のジャンプで加点(GOE )を積み増していくことと、総合的な演技力が大切だ」と説いてきた。
その戦略は見事にあたり、4回転ループ、ルッツを封印して2種類の4回転に抑えた羽生がオリンピック連覇、もともと2種類だけを武器にやってきたハビエル・フェルナンデスが悲願の銅メダルに輝いた。まさにオーサーの手腕といえる愛弟子のダブル表彰台だった。
羽生「一番すごい所はピーキング」
またオーサーは、本番のここぞという場面で選手に力を発揮させる“ピーキング”の名コーチでもある。
羽生自身も「ブライアンの一番すごい所はピーキング」と言い切るほど。選手の日々の練習量と調子、身体の強さ、性格などを見抜き、本番前の1~2週間の練習メニューを決める。
ハードな練習で技術を高め、そのあと休養を取って体力を回復させることで、技術と体力のベストバランスが試合当日に訪れるようスケジュールを組む。この練習量と日数の見極めが素晴らしいのだ。
平昌オリンピックでも、ケガで長期休養していた羽生を1月中旬からの1カ月間の練習を通して、オリンピック本番当日にピークが来るよう導いた。
実は、オーサーの手腕を期待して移籍するのはメドベデワだけではない。平昌オリンピックで4位になった金博洋(中国)も、オーサーの元への移籍を予定している。
中国スケート連盟代表であり、バンクーバーオリンピック金メダリスト(ペア)の趙宏博は「この2年、他の一流選手もジャンプだけでなくスケーティングや演技力を高め、演技構成点を伸ばしている。技術の安定感、ジャンプ能力、演技の芸術性を高めていくには、オーサーの右に出る者はいない」と中国メディアに語っている。