野球のぼせもんBACK NUMBER
焦りと力みにハマる2000本安打地獄。
仕掛け人・川島慶三が内川聖一を救う。
posted2018/05/09 11:15
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
難産に立ち会っている。
4月末は大阪に行き、そのまま千葉にも出向いた。GWの終わりに福岡に戻ってきた。さすがにもう旅に出ることはないと思っていたが、今度は埼玉へ。
内川聖一、2000本安打。
その目撃者になるために駆けずり回っている。
本稿は8日の県営大宮球場を訪れる前に書き上げているので、世に公開された今はもう祝福ムードに包まれているかもしれない。
ぜひ、そうであってほしい。
「それが逆に緊張しちゃうんですよね」
残り25安打で今季開幕を迎えた。内川ほどの実力者である。4月中の達成は間違いないだろうと考えていた。しかし、打撃の状態がまるで上がらなかった。
「バットを構える時の位置は、傘を持つのと同じ。自然が一番いい」
それが内川理論だが、こんなスポーツライター風情の目にも“力み”は明らか。当然、バットスイングはおかしくなる。
嫌な予感はあった。
「毎試合緊張はしますけど、WBCや日本シリーズよりも、紅白戦とかオープン戦の方が緊張します」
こんな嘘みたいなことを、今年2月の宮崎キャンプ中に大マジメに語ってくれたことがあった。
「大舞台になればなるほど、もしダメでも自分で責任をとればいいんでしょって開き直ることが出来るんです。だけど紅白戦やオープン戦はその日、その打席の結果よりもシーズンに向けた準備をしながら戦っていかなくちゃいけない。1試合、1打席をきちんとやらないといけない。それが逆に緊張しちゃうんですよね」
2000本へのカウントダウンの道程もまた、それに近いところがある。