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比嘉大吾の減量失敗はなぜ起きたか。
「体重は落として当たり前」の声も。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2018/04/17 17:15

比嘉大吾の減量失敗はなぜ起きたか。「体重は落として当たり前」の声も。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

比嘉大吾のキャリアは大きく歪んでしまった。ボクサーにとって階級の選択、そして減量は永遠の課題なのだろう。

短い試合間隔、規格外の肉体。

 比嘉はなぜ減量に失敗してしまったのだろうか。具志堅会長は「期間が短かった」と前回の試合から2カ月強という短いスパンで試合を組んだことを悔やんだ。

 直近4試合の比嘉の試合間隔を見ると、3カ月半、5カ月、3カ月半。こうしたサイクルができていたために、2カ月強では心身ともに十分な準備を整えられず、それが最後まで尾を引いたとみることはできる。

 確かに言えることは、比嘉は試合のたびに減量に苦しみ、ここ数試合は危ない橋を渡っていたということだ。昨年5月の世界初挑戦前は、減量中にパニック障害を起こした。今年2月のV2戦ではサウナで脚のしびれが発生。このときは水分補給して、2日後の計量を何とかクリアした。

 比嘉のハードトレーニングは有名な話だが、一方で野木トレーナーによれば、もともとジャンクフード好きで、体に余分な脂肪がつきやすい傾向があった。

 では、比嘉が理想的な食生活を送れば、十分にフライ級でやっていけるのだろうか。この質問に野木トレーナーは「いや、あれだけの筋肉量ですから、それでもあと1試合、2試合がいいところだと思います」と試合の2週間前に語っていた。

 確かに比嘉の肉体はフライ級では規格外だ。今回の試合前に計測された比嘉の胸囲は97センチ。これは体重が20キロ重い、10階級上の村田諒太(帝拳)とほとんど変わらない数字である。

 こうした状況で過酷な減量を成功させようと、野木トレーナーは今回初めて朝夕2食の手製弁当を用意するなど、打つべき手は打ったつもりだったが……。

浜田氏は「体重は落として当たり前」。

 山中慎介と対戦したルイス・ネリ(メキシコ)の計量失格からわずか1カ月半ということもあり、今回の計量失格は大きな議論を巻き起こした。比嘉に厳しい指摘もあれば、同情的な見方もあった。

 ここで、計量失格直後、メディアに囲まれた浜田氏の言葉を紹介したい。浜田氏は沖縄の後輩である比嘉に大きな期待をかけていただけに、苦渋の表情を浮かべながらも次のように話した。

「体重は落として当たり前ですからね。たとえばドーピングだったら(それが禁止薬物だと)知らなかったということもひょっとしたらあるかもしれない。それと違って体重は、自分で毎日、3回も4回も測るわけですから」

 体重は落とすのが当然、落とせなかった最終的な責任は本人にある―─。

 浜田氏のシンプルかつストレートな意見を、ここでは支持したい。これまで世界タイトルマッチに出場した選手はことごとく体重を落とした。大いに苦しんだ選手も少なからずいたが、それでも最後には落とした。落とせなかったということは、やはり危機感が足りなかったと言わざるを得ない。

【次ページ】 文句なしのスーパースター候補だった。

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