野球善哉BACK NUMBER
国際大会で日本の野球が不評って?
勝つための戦術と“マナー”の問題。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/04/17 07:00
大差がつく試合も多かった2018年のセンバツ。その時の考え方が日米で違う、というのは知識として持っていて損はない。
ルールではなく“マナー”という問題。
他にも例はある。2012年に韓国で行われたU-18の世界大会で、試合中にスタンドで配球を調べていたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けたことが発覚した。
規則に禁止とは書かれていないのだが、即刻注意された。
4、5年前には、リトルリーグの世界大会で日本チームが優勝したが、塁上にいる走者が打者にサインを伝達していたことが発覚し、これも話題となった。
直近では昨秋、カナダで行われたU-18W杯の3位決定戦で、日本代表が7-0とリードしている試合の終盤に盗塁を成功させた。これに相手の二塁手が激怒。事態を重く見た球審が警告試合を宣告した。
日本の行為はどれも規則には抵触していないが、世界的には野球のマナーとして共有されているものばかりだ。
日本は少年野球から、勝つための野球を叩き込まれている。
そのため、どれだけの得点差があっても攻撃の手を緩めない。10点以上の差があっても、いつ試合がひっくり返されるか分からないからと、盗塁やバントを仕掛けて得点を積み重ねていく。
そこに「対戦相手とともに楽しむ」という文化は薄い。
7点差での盗塁は是か非か。
高校野球でも、その傾向が強い。
今大会でも、大差の試合で送りバントや盗塁を仕掛けていく場面があった。筆者が高野連に「試合の進め方」について聞いたのは、今年日本で国際大会が開催されることが気になっていたからだ。
センバツのある試合では、7点差の終盤に盗塁を決めたチームがあった。10点差でも同じことをするのかと監督に聞くと「うちは攻撃型のチームなので、次の1点、次の1点を取ることを心掛けている。サインを出す時もあるけど、相手にスキがあったら選手には積極的に狙えと話しています」と語っていた。
もっとも、その監督の考えを否定しようという気はない。高校野球で勝利を求めるためには、自然な発想だろう。
最近は金属バットの性能が向上したこともあり、セーフティリードというのがなかなか存在しない。得点は多ければ多いほどいいと考える状況なのも理解できる。
ただ、国際大会の批判に対して日本の高校野球界がどう対応するかは、今後考える必要があるのではないだろうか。