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巻誠一郎の生き様が熊本に重なる。
試合も震災復興も走り続ける日々。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE

posted2018/04/14 08:00

巻誠一郎の生き様が熊本に重なる。試合も震災復興も走り続ける日々。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

巻誠一郎のプレースタイル、人間としての熱量は今も変わっていない。熱い男なのだ。

巻が発表したメッセージ。

 チームが練習を再開できたのは5月に入ってから。練習を終えて、避難所に顔を出すことが巻の日常になった。

 震災後、初めての試合となった5月15日のジェフユナイテッド千葉戦以降、チームはなかなか勝てなかった。それでもアウェーに駆けつけたサポーターは、いつも温かい声援を送ってくれた。チームもサポーターも、巻も、熊本の人たちも、いかなる状況であっても前を向こうとした。

「YOUR ACTION KUMAMOTO」では巻がこんなメッセージを記している。一部、抜粋させていただく。

「わたしはスポーツから諦めない心を学びました。

1人の力は小さなものだけど、1人1人が集まれば大きな力になります。

スポーツに触れて諦めない心を感じて欲しい。

そして、これからの熊本、日本の未来へ繋げていって欲しいのです」

 諦めない心――。

 その思いを、ずっと、いつなんどきでも彼は燃やし続けている。

10分に90分のエネルギーをぶつける。

 勝ち点3を逃がした町田戦を終え、悔しそうな表情のままの巻がロッカールームから出てきた。

「一生懸命耐えていたんですけど、最後のワンプレーでやられましたね。うーん、という感じです。僕らの勝つチャンスのほうが大きかったとは思うので、その意味で僕らのほうが残念だったか、と」

 アディショナルタイムを含めれば約10分のプレーだった。それでもチームの温度を上げていけるのはやはり巻ならではだ。

 彼は言う。

「(出場時間は)5分だろうが、10分、30分、90分だろうが、同じように90分ぶんのエネルギーをぶつけなきゃいけない。だからいつも変わらず、同じ状態を保つのは意識しています。監督が常に使いやすいように、波をつくらないようにしています」

 与えられた時間ですべてを出し切る。それはこの日も同じだった。

【次ページ】 復興支援マッチは、「注目が集まる試合」。

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