ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
世界を変えた最強の両翼“ロベリー”。
バイエルンで最後の疾走を見届けろ。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byGetty Images
posted2018/04/13 10:30
左にリベリー、右にロッベン。カットインからの決定機演出は、バイエルンの象徴であり続けた。
ラームも足を止めた疾風迅雷ロッベン。
そのリベリーと練習中に揉み合いになるなど、時折衝突しながらも長らく“世界最強の両翼”を形成してきたのがロッベンだ。
リベリーに遅れること2年、2009年夏の移籍マーケットが閉まる直前にバイエルンに加入すると、いきなりファンの度肝を抜く。
忘れもしない2009-10シーズンのブンデスリーガ第4節。新天地でのデビュー戦で後半からピッチに立つと、前シーズンのマイスターであるヴォルフスブルク相手に2ゴールを叩き出したのだ。どちらもアシストはリベリーで、特に圧巻は2点目だった。
自陣でボールを持ったロッベンが、ハーフウェーラインを越えそうなあたりで、やや前方を走るリベリーにパスを通す。そのままボールを持ち運んだ背番号7がエリア付近で横パス。それを受けたロッベンが、シュートフェイントを入れてから右足でネットを揺さぶったのだ。
まさに疾風迅雷。他の味方がまるで追いつけない異次元のスピード(実際、フルスプリントで駆け上がっていたフィリップ・ラームは、途中で諦めたかのようにスピードを緩めている)を維持したまま、仕掛け、崩し、フィニッシュのすべてをハイレベルに完遂したあのゴールは、バイエルンのその後の成功を約束するかのような代物だった。
10年前のブンデスのテンポは遅かった。
“ロベリー”はバイエルンの功労者であるだけでなく、ドイツサッカーの高速化にも好影響を及ぼした名コンビだ。
2000年代中期のブンデスリーガと言えば、ミヒャエル・バラックのパワー、ジエゴの惚れ惚れするようなテクニックが“最大の華”であり、アイウトンやセバスティアン・ダイスラーなど俊足も売りのスター選手は存在したものの、リーグの全体的なプレーテンポはとにかく遅かった。
プレミアでティエリー・アンリが、セリエAでアンドリー・シェフチェンコがそのスピードで猛威を振るっている時代に、ブンデスリーガはまるで取り残されているようでもあった。