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ブラジルやスペインから学ぶもの。
ハリルJに目指すべき理想はあるか? 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2018/04/05 07:00

ブラジルやスペインから学ぶもの。ハリルJに目指すべき理想はあるか?<Number Web> photograph by Getty Images

目標はあくまでもW杯での記録を塗り替える、ベスト16突破なのだが……。

ブラジル代表を支える「秩序と献身」。

 日本代表がマリと辛くも引き分けたその日、ブラジル代表は開催国ロシアとのテストマッチに臨んでいた。

 2016年6月にチッチが監督に就任してから「超」が付くほどの安定飛行を続けるセレソンだが、彼らの強さを支えているのは「秩序と献身」だろう。

 ジーコ、トニーニョ・セレーゾ、ソクラテス、ファルカンの“黄金のカルテット”を擁した'82年スペインW杯のチームに美しさでは劣るものの、勝利をもぎ取る確実性はかつての比ではない。

 ネイマール(3月の親善試合は怪我で欠場)を筆頭とする前線のスター選手たちにもハードワークを、とりわけボールロスト後のプレッシングを徹底させ、組織的でソリッドな守備体系を築き上げた指揮官の手腕は称賛されてしかるべきだ。

 しかし、約束事や規律で選手をがんじがらめにし、伝統のテクニカルなアタックを過去に置き去りにしたわけでは決してない。秩序の中に「遊び心」という無秩序が散りばめられているからこそ、彼らのサッカーは異質であり、極めてエンターテインメント性に富んでいるのだ。

サッカーの楽しさ伝えるマルセロとD・アウベス。

 そんな遊び心の一番の表現者が、マルセロとダニエウ・アウベスの両サイドバックだ。

 彼らはまるでウイングプレーヤーのように縦に突き抜け、内に切れ込み、崩しや仕掛けのみならずフィニッシュの局面にも頻繁に顔を出す。

 リスクを承知で攻め上がっているから、ときに強引さが祟ってピンチを招いても、さして気にも留めない。

 ロシア戦の前半30分過ぎには、こんなシーンがあった。

 敵陣に少し入ったあたりで、例によって内に絞って逆サイドからのボールを受けたD・アウベスがコントロールを誤る。そこをロシアの選手に突かれ、最後はシュートにまで持ち込まれてしまったのだ。

【次ページ】 ブラジルサッカーのスタイルは揺るがない。

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