炎の一筆入魂BACK NUMBER
盗塁ゼロでも開幕3連勝――。
広島カープの「真の機動力」とは?
posted2018/04/03 13:20
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
広島のお家芸は、今年も健在だ。
中日を本拠地マツダスタジアムに迎えた開幕3連戦。一発あり、小技あり、連打ありと多彩な攻撃で3試合連続二桁安打を記録し、逆転勝利で3連勝の好スタートを切った。
今年も広島攻撃陣は他球団の脅威となることを印象づけるには十分だった。3試合で計31安打20得点の攻撃力を促進させたのは、5本飛び出した本塁打ではない。カープのお家芸と言える“機動力”だ。
開幕戦の6回。同点に追いつきなおも1死二塁から代打に送られたアレハンドロ・メヒアは期待に応えてレフトの左へはじき返した。さらにレフトを守る中日新外国人のアルモンテの緩慢な動きと本塁への山なりの送球に、メヒアは一塁を蹴って一気に加速。決して俊足ではない192cmは砂埃を上げながら二塁を奪った。
外国人野手では3番手と目されながら開幕一軍入りを果たし、迎えた今季初打席。安打が出てホッとしてしまいそうだが、集中力を切らさずに「次の塁を狙う意識」から体が反応した。
決勝点は、直後に生まれた。
田中広輔の二塁打は、メヒアの二塁進塁によって中日外野陣が前進守備を敷いた左翼を越えた。定位置であれば守備範囲内であり、同点のまま攻撃を終えていた可能性がある。
「機動力に足が速い、遅いは関係ない」
「機動力に足が速い、遅いは関係ない」と広島一筋33年の高信二ヘッドコーチは言う。
広島の伝統と言われるように、若い選手や足の速い選手だけが走塁意識が高いわけではない。新井貴浩や石原慶幸といったベテラン選手や体重100kg超のエルドレッドら外国人選手も例外でないのだ。
逆に、そういった選手の果敢な走塁がチームを奮い立たせ、よりチームに走塁意識を浸透させていくということ。