炎の一筆入魂BACK NUMBER
盗塁ゼロでも開幕3連勝――。
広島カープの「真の機動力」とは?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/04/03 13:20
昨季は35盗塁で盗塁王に輝いた田中広輔を筆頭に、チーム全体でリーグトップの112盗塁を記録した。
「走塁については口酸っぱく言い続けている」
今春キャンプでは走塁に特化したメニューこそ組まれなかったが、玉木朋孝内野守備走塁コーチは「実戦の中で次の塁を狙う意識、走塁については口酸っぱく言い続けている」とチームへの浸透度に自信をのぞかせる。
「暴走はいけないけどね。でも(積極的な走塁ならば)アウトになれば反省して、次につなげてくれればいい」と高ヘッドコーチ。積極的走塁を推奨するチーム方針が、果敢な走塁を後押ししている。
好走塁は状況を大きく変える。
開幕2戦目もまた、機動力が試合の流れを変えた。
躊躇なくスライディングしていく鈴木誠也。
1点ビハインドの4回。1死から四球で歩いた丸佳浩が、鈴木誠也の左翼への強い打球を、アルモンテがファンブルしたミスを見逃さなかった。
「準備はしっかりできていた」と、わずかに右へ2バウンドするだけの隙だったが、丸は一度もスピードを緩めることなく、三塁に滑り込んだ。
さらに慌てて三塁へ送球するアルモンテの動きに、打者走者の鈴木も反応。スライディングで二塁に滑り込んだ。
右足首負傷から復帰2戦目でも走塁に対する意識は薄れていない。鈴木も試合後は「普通のことです」と涼しい顔で振り返っていた。
ひとつ先の塁を奪うことで得点の可能性はグンと上がる。相手の守備陣形を変え、バッテリーにも動揺を与えることができる。広島は打つだけではなく、走ることでも“攻めている”のだ。
ファンも、広島野球を熟知している。
好走塁に対する反応からもうかがえる。前述の2つの好走塁にスタンドはドッと沸いた。
まるで選手の走塁を後押しするかのような歓声で、球場の空気が変わるのが分かる。
一気にボルテージが上がる、あの瞬間が広島の攻撃のスイッチが入る合図のようにすら感じられる。