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「花巻東の小兵」は今年も仕事人。
159cm八幡尚稀がもぎとった四球。

posted2018/03/31 17:20

 
「花巻東の小兵」は今年も仕事人。159cm八幡尚稀がもぎとった四球。<Number Web> photograph by Kyodo News

10回に訪れたワンチャンスを一気に得点に結びつけた花巻東。その陰には、監督が信頼したスペシャリストの力があった。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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「最後の1人」が、サヨナラ劇のお膳立てをした。

 10回裏、スコアは依然として0-0のまま。花巻東打線は、そこまで彦根東のサウスポー増居翔太に、ノーヒットに抑えられていた。

 先頭の4番・紺野留斗がチーム初安打となるライト前ヒットを放ち0アウト一塁とすると、佐々木洋監督はすかさず三塁コーチャーを呼び寄せ、代打に送った。

 秋の東北大会ではメンバーから外れ、今大会も佐々木監督が「迷いに迷って最後にメンバーに入れた選手」と話す八幡尚稀である。身長159センチ、体重60キロの小兵選手だった。

 八幡はバントのスペシャリストだった。佐々木監督が明かす。

「今大会からタイブレーク制が導入されて、ノーアウト一、二塁で、三塁側に確実にバントを決められる選手が必要だと思ったんです。タイブレーク制がなければ、ベンチ入りしていなかったかもしれないですね」

 増居はバントの構えをされると、素早く守備に移れるよう前に突っ込みがちになり、コントロールを乱す傾向があった。そこで佐々木監督は、バントがうまいだけでなく、体の小さい八幡を送り出し揺さぶりをかけようとしたのだ。

花巻東、小兵の系譜。

 初球のサインは「待て」。ボールが先行したため、次も、その次も「待て」で、カウントは3ボールとなる。そこからさらに1球待って、3ボール1ストライクとなった後も、さらに「待て」。

 佐々木はそのねらいをこう話す。

「八幡は、1球ストライクを取られてからでもバントできるし、追い込まれたら、そこからエンドランか何かでなんとかして進塁させてくれる選手なので」

 指揮官は八幡の技術に賭けたのだ。

 花巻東には、小兵の名プレイヤーの系譜がある。八幡が小学校3年生で野球を始めたとき、甲子園で四強入りに貢献したのが身長155センチ、「2番・センター」の佐藤涼平だった。同校には'13年夏、「カット打法」で活躍した身長156センチの千葉翔太(現・九州三菱自動車)もいた。

 八幡が言う。

「小さいバッターでも、花巻東なら、全国でやっていけるんだと思った」

【次ページ】 主役ではなくとも、印象は強烈だった。

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