イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー帰還。メジャー取材24年で
初遭遇した感動的で「粋」な光景。
posted2018/03/16 08:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
6年ぶりにマリナーズへ復帰したイチローがキャンプ地で見せる笑顔がいい。全体キャンプインから遅れること18日。3月8日の合流初日にはこんなことが起こった。
フリー打撃でイチローが打席に入るとファンから歓声と拍手が沸き起こる。キャンプの打撃練習ではなかなかない光景にイチローも最初は「ひょっとしたら、そうかなと思ったけど」と半信半疑だったが、自身へ向けられたものと知ると、しみじみと言った。
「本当に人の温かみしか感じていないですね。ありがたいことです」
11日にはキャンプ合流4日目にしてオープン戦に出場した。前回在籍時の6年前同様、クラブハウスからカートに乗って球場へ向かう表情は和やかそのもの。この場に戻ることを許されたイチローの喜び表れた。その凱旋をファンはチケット完売の計らいで出迎えた。
「選手側が感じないなんてあり得ない」
「バッティング・ファースト、レフトフィルダー、イチロー・スズキ」のアナウンスが6年ぶりにピオリアに流れる。どうせなら「ライトフィルダー」の響きを聞きたかったが、スタンドを埋め尽くした8499人のファンは拍手喝采、総立ちで歓迎した。
オープン戦の打席でスタンディング・オベーションをこの目で見たのはメジャー取材歴24年目にして初めてのこと。イチローも感慨深げに言った。
「アメリカの文化に『粋』というものはあまりないですけど、こう言うのはそうですよね。それを『選手側が感じないなんてあり得ない』よね。2001年に(メジャーに)来た時は自分のことで精一杯だったけど、これはやっぱり『人の思いに応えたい』と言う気持ちが、自分のことを(しっかり)やるのは当然ですけど、それと同じくらい生まれるわね」
経験を積むほどに深みを増すイチローの言葉が胸に響いた。