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松本亮が浴び続けたボディーと洗礼。
“与しやすい世界初挑戦”の誤算。

posted2018/03/01 11:30

 
松本亮が浴び続けたボディーと洗礼。“与しやすい世界初挑戦”の誤算。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

執拗なボディ攻撃に松本亮の体が折れるシーンもあったが、それでも最後まで倒れなかった。決してこれで終わりではない。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

 WBA世界スーパー・バンタム級タイトルマッチが28日、後楽園ホールで行われ、挑戦者11位の松本亮(大橋)は王者のダニエル・ローマン(米)に大差判定負け。世界初挑戦に失敗した。

 控え室をあとにする松本の端正なマスクは歪み、その姿はいつもより小さく見えた。12ラウンド、36分間、ローマンのパンチにさらされ続けた。ボクシングの敗者、ことのほか世界タイトルマッチの敗者は、試合前に膨らむ夢が大きいだけに、余計に寂しく映る。

 松本は2階級制覇王者の井上尚弥、既に3階級を制覇している八重樫東が所属する大橋ジムのホープだ。

 ファッション雑誌に登場するほどのルックス、21勝(19KO)1敗という戦績が示す高いKO率。中学生のときからジムに通い、大橋秀行会長、松本好二トレーナーと同じ横浜高を卒業しているという事実も、スタッフの思い入れを大きくさせていた。

 だからこそ、大橋会長は多少の無理をしても、今回の世界タイトルマッチを組んだのだ。この事実こそが松本へかける期待の大きさの、何より証だったかもしれない。

「難攻不落」には見えなかったローマン。

 スーパー・バンタム級は日本人選手の激戦区である。2階級制覇を狙う元世界王者の亀田和毅(協栄)、世界再挑戦を狙う和氣慎吾(FLARE山上)と大竹秀典(金子)、4団体で世界ランキング入りしている日本王者の久我勇作(ワタナベ)らが世界挑戦のウェイティングサークルに入っている。こうした面々がそろってローマン挑戦を目論んでいたのだ。

 現在、日本国内で認められている世界の統括団体はWBA、WBC、IBF、WBOの4団体。海外を主戦場とするWBCとWBOの王者へは挑戦が難しく、IBF王者の岩佐亮佑(セレス)は3月1日に防衛戦が決まっている上に、日本人選手と対戦するなら「挑戦者決定戦を勝って」と注文をつけていた。

 さらに、ローマンが「与しやすいチャンピオン」と見られていたことも“ローマン人気”を高めていた。特別にパンチがあるわけでもなく、スピードがあるわけでもなく、明らかにやりずらそうなテクニシャンというわけでもない。23勝(9KO)2敗1分という戦績も「難攻不落」という印象からは程遠い。

 昨年9月、神戸で前王者の久保隼(真正)を圧倒し、9回TKO勝ちでタイトルを奪った姿を日本で披露した上で、なおこのような評価だった。

【次ページ】 一発当たれば、という淡い希望も……。

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