マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト候補投手を東芝で発見。
岡野祐一郎は決して“炎上”しない。
posted2018/03/04 09:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
プロ野球のキャンプも大詰めに入ってきたが、この時期、アマチュア野球界もすでに“今季”が始動している。
大学や社会人では暖かい土地でキャンプを行うチームも多く、自分たちが担当したルーキー選手をプロのキャンプで確認したスカウトたちが、今度は大学や社会人のキャンプに足を運んで、今季の注目選手たちの“立ち上がり”をその目で確かめる。
同様の動きをしてみようと思う。
今シーズン、私がその成長ぶりを楽しみにしている選手たちを追って、“春いちばん”のプレーぶりをこの目で確かめ、お伝えする。
今回は、社会人野球・東芝の松山キャンプから始めよう。
この時期、東芝の松山キャンプは恒例になっている。今回ですでに20年近く、四国・瀬戸内の温暖な気候の中で、冬の寒さで眠っていた体を目覚めさせ、さらに腕を磨く。
ここ数年、「東芝」は揺れた。会社のトップリーダーたちの不祥事をきっかけに、企業としての存続すら危惧される時期があった。
東芝の象徴である「企業スポーツ」でも、バスケットボール部が売却され、長い伝統と実績を誇る「野球部」もあわや……という場面もあったという。
新生東芝の大黒柱は甲子園2度出場の右腕。
そんな春に就任した平馬淳監督は、選手時代に都市対抗優勝2回、社会人ベストナイン2回、シドニー五輪にも出場したという腕っこきの野球人。彼のもとで「新生・東芝野球部」が立ち上がった。
大黒柱になるのが、2年目の岡野祐一郎投手(23歳・180cm84kg・右投右打)だ。
福島・聖光学院高で甲子園に2度出場し、進学した青山学院大でも2年生からローテーションの一角として登板。東芝でも1年目の昨季から、エース格として都市対抗などで奮投を見せた。
高校時代から何度も実戦のピッチングを見ているが、この投手が“炎上”した場面を見たことがない。いつもいい。いや、人間だからいつも調子が良いわけがないのだが、そういう時でも、なんとか“かっこ”をつけてしまうのだろう。
そうしたコンスタントな実戦力が、東芝・岡野祐一郎の最大の長所とみる。