マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト候補投手を東芝で発見。
岡野祐一郎は決して“炎上”しない。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/03/04 09:00
U-18の高校日本代表にも選ばれたことがある岡野祐一郎。プロでもその実戦力は通用しそうな気配がある。
聖光学院当時から精度は際立っていた。
いつも試合が作れる。実のところ、投げさせてみなきゃわからない投手がほとんどのアマチュア球界で、こういう持ち味で勝負できる投手は稀少価値がある。
キャンプ終盤の2月22日。伯和ビクトリーズ(東広島市)との今季最初のオープン戦に先発した岡野祐一郎。この日も5イニングをシングルヒット4本の無失点に抑えて、上々のスタートをきった。
この投手の成績がコンスタントなのは、ほとんど投げ損じがないからだ。もっと具体的にいうと、フワッとベルトより上に抜ける“幼稚な”ボールがない。
2月下旬、まだ調整過程のこの時期なのに、スライダー、カットボール、フォークにシュートも混ぜていたと思う。140キロ台前半の速球とこれだけ多彩な変化球を交えながら、80%前後の確率で捕手の構える低めにボールが集められていた。
その高い精度は、聖光学院高当時からのものだ。その頃は、体も細かった。今は84kgだが、甲子園で投げていた頃は70kg前後。それでも、速球と同じ鋭い腕の振りから変化球を両サイド低めにきめられるコントロール。さらに、全力投球しても球道が暴れないボディーバランスの良さ。
リリースポイントでボールをパチッと切れる指先感覚と、滑らかな全身の連動で投げられるリズム感とタイミングの良さ。投手としてのいくつもの“財産”を保ったまま、岡野祐一郎は大学、社会人の5年間で体を15kgほど大きくし、速球もアベレージで10キロ近くスピードアップさせてきた。
長いイニングを投げるのに大切な資質。
「パワーピッチャー」でいこうと思えば、その線も“あり”だろうに、そっちのほうに煽られないのが、この投手の賢いところだろう。
伯和ビクトリーズ戦でのピッチングを見ていても、わずかに甘く入った速球を捉えられた直後、次の打者の初球にカッとなって速球から入るような“若さ”もなく、捕手のサインに首を振ってから、カットボールを右打者の外にスッと動かしてファールを打たせてカウントを作った。
そんな大人の対応が、先発として長いイニングを投げるために大切な資質だ。