ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
デビュー30周年を教育委員会が後援!?
鈴木みのるが無料イベントをやる理由。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2018/02/27 11:30
「永遠のヒール」とも呼ばれる鈴木みのるだが、その生き方に夢があることも紛れもない事実なのだ。
現役バリバリで30周年を祝えるレスラーは稀。
猪木と同日デビューのジャイアント馬場も後楽園ホールで30周年記念試合を行なっているが、馬場も全日本プロレスの総帥として圧倒的な存在感と影響力は持っていたものの、レスラーとしては一線を退いての30周年到達だった。
その下の世代では、'01年に30周年を迎えた藤波辰爾は、当時新日本プロレスの社長という立場でセミリタイヤ中。'04年の長州力は、自身の団体WJプロレスが崩壊して浪人状態、'06年の天龍源一郎は「ハッスル」の重鎮だった頃であり、いずれも30周年記念大会は開いていない。
唯一の例外は、'14年11月1日に両国国技館で30周年記念大会を行った武藤敬司がいるが、武藤もまた現役バリバリというよりは、マット界の象徴的な立場になっての30周年到達だった。
こうして見ると、49歳にしてマット界の最前線でフルタイム闘い、新日本プロレスの看板タイトルのひとつ、IWGPインターコンチネンタル選手権の現役王者として30年目を迎えた鈴木みのるが、いかに異例であり、前代未聞であるかがわかるだろう。
「今の子供たちは夢を持てない子が多いんだよ」
こうして迎えた30周年のビッグイベントが、入場無料で行なわれるというのも、また前代未聞だ。鈴木はどうしても“無料”にこだわりたかった理由をこう語る。
「このイベントを、横浜の子供たちに見てもらいたいんだよね。俺は小学校を回って講演会をしたこともあるんだけど、今の子供たちは夢を持てない子が多いんだよ。
小さいうちからすごく現実的で、夢見ることをハナっから諦めちゃってる。
『サッカーは好きだけど、サッカーじゃ食えないんで』とか、『漫画が好きだけど、漫画家で売れる人はひと握りだから』とかね。
そういう夢の芽を潰してるのは大人なんですよ。親だったり先生だったり。俺自身、子どもの頃に『プロレスラーになりたい』って言ったら、周りの大人たちから『そんなの無理だ』『できるわけがない』ってさんざん言われてたけど、そんなガキが30年経ったら、これだけのものを抱えて帰ってこれたわけじゃん。だから俺は、子供たちに『世の中に出たらこんな面白いことがいっぱいあるよ』『俺ができたんだから、キミたちにだってできるよ』ってことを見せてやりたい。だったら無料しかないなと」