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小野塚彩那「やりきれて良かった」
五輪選手も恐怖心との戦いは難しい。
posted2018/02/21 11:40
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Sunao Noto/JMPA
青空の下、白いパイプがまぶしく輝いていた。フリースタイルスキー女子ハーフパイプ。6日前の2月14日、スノーボード男子ハーフパイプで平野歩夢が銀メダルを獲得した会場で、ソチ五輪銅メダリストにして昨年の世界選手権女王の小野塚彩那(石打丸山クラブ)が、果敢に舞った。
予選上位12人による決勝。右手を青空めがけて突き上げてスタートした1回目は、5つ目のトリックで尻もちをついて50.80点の10位にとどまった。2回目は序盤にリップに板が引っかかるミスをしたことで77.20点と伸びなかったが、6位に浮上。しかし、上位2人はすでに90点台に乗せていた。
ラストチャンスとなった3回目。小野塚は冒頭で大技の「900(横2回転半)」を決めた。金メダル獲得のために周到に用意し、予選では温存していた技だ。その後は「720(横2回転)」で安定感抜群の回転を見せるなど、順調にトリックを繰り出した。後ろ向きに滑る「スイッチ」で難度の部分もしっかりとアピールした。
しかし、最後の「720(横2回転)」でわずかに乱れた。得点は82.20点で5位だった。ソチ五輪に続いてのメダル獲得とはならなかった。
大学卒業後に転向し、3年でソチの銅。
取材エリアにやってきた小野塚は、少し悲しげだった。しかし、胸を張っていた。女王のプライドを感じさせた。
「メダルは取れなかったですが、今自分ができることは、しっかり出し切ったと思う。やりきって終われないのが一番悔しい思いをするもの。悔しいけれど、やりきれて良かった」
アルペンスキーと基礎スキーで活躍した小野塚がこの種目に転向したのは、専大卒業後のことだ。スキーを滑らせる確かな技術と五輪に懸ける情熱を武器に、転向してからわずか3年目の'14年ソチ五輪で銅メダルを獲得。
その後は'14年-'15年シーズンから2シーズン連続でW杯総合優勝を飾り、'16年-'17年シーズンはW杯総合優勝こそ逃したものの、3月の世界選手権で初優勝した。残すタイトルは五輪金メダル。そう考えるのは自然だった。