JリーグPRESSBACK NUMBER
井山七冠の幼馴染がフッキ封じ!?
川崎のクレバーな雑草、登里享平。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/02/19 07:00
久々に等々力へと戻ったフッキに仕事を許さず。川崎は負けたが、局面勝負で軍配が上がったのは登里だ。
左サイドを香車のように抜け出して。
フッキに守備をさせ続けたのも、効果的な対策につながった。
「ロナウジーニョはボールを持てば超一流だが、彼に守備をさせれば怖くない」と言っていたのはイビチャ・オシムだが、登里が攻撃参加をすれば、フッキはカウンターを睨んで攻め残りするのではなく、自陣に下がって守備を遂行する。ならば、左サイドの攻防で先手を握れば、フッキを自陣に押しとどめて、攻撃の怖さを半減させることができる。
その狙いとして、「サイドバックが高い位置をとったときのマークの受け渡しがうまくいってなかったので、そこをうまく使えれば」と大島は明かす。
上海の右サイドバックであるワン・シェンチャオは、低い位置に降りる大久保嘉人に食いついていくため、そこをうまく釣り出せば攻略できるというわけだ。前半9分には、その狙い通り、左サイドを香車のように抜け出した登里に見事なスルーパスを届けている。このチャンスはゴール前まで必死に戻ったフッキに阻止されてしまったものの、裏返せば、フッキを守備に引っ張ることができた場面だったとも言える。
登里がその駆け引きを振り返る。
「フッキはディフェンスも頑張っていましたからね。ただ押し込んだら付いてこないので、そこのタイミングを見計らって出て行こうと。ヨシトさんに相手の4番が食いついたところで、リョウタから、1本、ありましたね。抜こうとしてフッキに守られましたけど、そういう入れ替わりのところを、うかがってました」(登里)
フッキのシュートはFKの2本だけ。
こうしたいくつかのフッキ対策は、総じて機能したと言って良いだろう。試合を通じてフッキのシュートは2本だ。それもどちらもFKによるもので、流れの中ではシュートを打たせなかった。
登里は絶対的なレギュラーではないが、そういう存在が計算できる働きを見せてくれたのは、今年の過密日程を戦っていく中でも収穫だったと言える。
もちろん、結果が欲しかったのは確かだ。0-1で敗戦し、これで富士ゼロックスから公式戦連敗。ミックスゾーンに現れた登里は、痛々しくアイシングされた左手首を気にしつつ、悔しさをにじませながらも前を向いた。
「結果が全てですけど、勝ってきっかけさえつかめれば。初戦を落としたのは痛いけど、しっかりと切り替えていくのが大事かなと」