フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦、66年ぶりの五輪連覇!
宇野昌磨の銀と共に歴史的快挙。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/02/17 20:20
順位が確定した後、羽生、宇野、フェルナンデスら3人は自然と抱きしめあった。全力を尽くして戦った3人の、互いへの敬意が溢れる美しいシーンだった。
怪我を乗り越えて勝利を手にした理由。
報道陣の前に姿を現した羽生は、演技直後に勝ったと思ったかと聞かれると、「勝ったと思いました」と誇らしげに答えた。
結局4回転はトウループとサルコウを2回ずつ入れた。このプログラム構成については、こう述べている。「今日起きた時点で考えようと思っていました。ある意味スケートができなかった期間があったからこそ、作戦ということを学び、勝つためにここに来れた」
4ループ、そして4ルッツと挑戦し続けてきた羽生だが、勝つためには必要ないのではという声は常にあった。それが怪我をしたことにより、結局2種類の4回転で勝利をつかんだ。
だが過去2年の間にさらに難易度の高い演技へと挑戦を続けてきたからこそ、4回転を4度という十分に難しい構成のプログラムを、怪我上がりの体で大きく崩れることなく滑り切ることができたのだろう。
「ソチオリンピックのときは、勝てるかなという不安な気持ちしかなかった。(今回は)自分に勝てたというふうに思いました」と喜びを語り、同時に支えてきてくれた人々への感謝の気持ちを何度も繰り返した。
初出場、最終滑走の重圧に耐えた宇野。
宇野昌磨は、初出場のオリンピックで最終滑走というプレッシャーの中、歌劇トゥーランドットの『誰も寝てはならぬ』の荘厳なメロディにのって演技を開始。出だしの4ループでいきなり転倒したが、持ち直して4フリップを成功させた。
後半の3アクセル、4+2トウループ、4トウループ、そして3アクセル+1ループ+3フリップなど、危ういジャンプもあったものの最後まで大きく崩れることなく滑り切り、後半では笑みも出た。フリー202.73で総合306.90。
銀メダルが決定。日本男子が1位、2位と歴史を作った瞬間だった。
宇野はこの日は朝の公式練習から、前日の疲れもあり、あまり良い状態ではなかったという。
「滑った感じ、体の感触で決していい状態ではないから良い演技はできる可能性は低いかもしれないと思いつつも、やるしかなかった。でもそういう練習もしてきたので不安はなかったです」
オリンピック特有の緊張というものは、最後まで感じなかった、という。樋口美穂子コーチに喜んでもらえたことは嬉しい、と言いながらも、「オリンピックの銀メダルという結果に、他の試合の銀メダルという結果とあまり違いは感じなかったです」と相変わらず飄々とした表情を崩さなかった。