F1ピットストップBACK NUMBER
F1日本GP、初めての春開催で問われるものとは? 好調の角田裕毅、連勝ストップのフェルスタッペンの鈴鹿を占う
posted2024/03/29 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
F1が春の足音とともに近づいてきた。
オーストラリアで3戦目のレースを終えた今季のF1。次の舞台は鈴鹿での日本GPだ。昨年まで秋に開催されてきた日本GPは、今年から春に移行。4月5日から3日間、鈴鹿サーキットで開催される。
時期が変わったことで、今年の日本GPは昨年までとどう変わるのか。
まず、気象条件だ。9月下旬に開催された昨年の日本GPは決勝レース開始時の気温が27.4℃、路面温度は38.6℃だった。それが今年は3月26日の時点でのある気象予報では、決勝レース当日の4月7日の気温は最高で18℃、最低が11℃と予想されている。つまり、約10℃低くなる。
だが、この気温でのレースが未知の領域というわけではない。例えば、コロナ禍明けの2022年の日本GPは秋の長雨の中で決勝レースが行われたが、このときの気温は19.8℃で、路面温度は26.7℃だった。つまり、季節が変わっただけで、今年の日本GPは2年前と同じような気温で開催される可能性が高い。
たとえ、その予報が直前に変わったとしても、F1チームが何年も蓄えた豊富なデータから今年の鈴鹿のコンディションに適応するのは、それほど困難ではない。あるエンジニアも「ドライであれば、気温が多少上下しても合わせられる」と言う。
春開催でも高い雨の可能性…
問題は空模様だ。3月28日時点の天気予報では今年も雨が予想されている。雨になると、マシンの本来の性能よりドライバーの腕がラップタイムに大きく影響する。例えば、2年前の雨の鈴鹿ではレッドブルが1-2フィニッシュを飾ったものの、最後までシャルル・ルクレール(フェラーリ)が2位争いをし、4位には伏兵とも言えるエステバン・オコン(アルピーヌ)が入った。
同じく雨の中で行われた2014年の日本GPでは当時最強だったメルセデスが1-2フィニッシュを飾ったものの、3位には予選9番手からセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が入り、前年王者の意地を見せた。
もし今年の日本GPが雨となると、今シーズン初のウェットコンディションとなる。ドライバーはもちろんだが、エンジニアにとっても2024年の新車をいかにセットアップしていくのか、腕が試されることになる。そのセットアップはマシンだけではない。パワーユニット(PU)の心臓とも言えるICE(内燃機関=エンジン)のセッティングも重要だ。
エンジンはインダクションポッドから入ってきた空気にガソリンを混ぜ合せ、シリンダー内で点火・爆発させてピストンを動かす。空気とガソリンの混合比は現在のF1では30対1と言われているが、入ってくる空気中の酸素密度は湿度によって変わる。雨ならばセッティングの影響がより大きくなるのだ。