野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
DeNAのPV映像はなぜ屈辱で始まる?
「過去」こそが横浜の力の源泉だ!
posted2018/01/22 08:00
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
Hideki Sugiyama
秋の日の実りは、なんとなくの予感があった。
2017年本拠地開幕戦。横浜スタジアムのゲートで配られていた球団発行の観戦ガイドともいうべきタブロイド判。その表紙をめくると、見開きでデカデカと掲載されていたのは、2016年CSファイナルで最後の打者になった筒香嘉智、空振り三振にしてやられた場面。
それは、ベイスターズの物語が昨年から続いていることを示していた。
プロ野球のお正月でもある開幕戦。おめでたい気分に縁起の悪いもんを持ち込むんじゃないよと、前年の惨敗に目を瞑り、絶望的な現状にも目を瞑るのがこれまでの慣例だった。
そう、たとえば同じシーズン最後の場面でも'11年の巨人戦という歴史に残る大殺戮。あの長野の代打逆転サヨナラ本塁打のシーンなんてあの当時に直視したら、本気でゲボ吐く人が続出したに決まっている。
前だけ向いたフリをした時代を卒業して。
だから開幕は、シレッと他球団と同じ顔して「優勝!」と前だけ向いたフリをする。後ろは見ない。嘆かない。3年連続90敗、経営悪化、「~の加入で正捕手は決まりました」。「来年CSに出られなければ私はクビです」。消えたグリエル横浜外国人墓地。
轟く筒香 飛び来るノリさん 荒波洗うデッキの上に 闇を貫く中畑の叫び(ギブアップ!) 金城は何処、多村は居ずや!
……なんて、都合の悪いものは見ない見ないの幾年月。ソンタクソンタクで過ごしてきたハマの春は、2017、ソンタクという言葉が定着した年。横浜DeNAベイスターズとして、ついに後ろを向いた。
あの三振シーンは、そのはじまりだった。
2016年。念願だったはじめてのCS出場。青く染まった東京ドームに“歴史と共に今反撃開始”と書かれた横断幕が翻るなか迎えた歓喜の瞬間。しかしそこから真っ赤に染まった広島へ。コテンコテンにやられての惨敗は、叫んでも叫んでも赤に呑みこまれていく苦い記憶。