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NBAを目指し、シュートは譲らない。
渡邊雄太が戦う大学での最後の1年。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2018/01/13 07:00
8チームが集結した昨年11月のラスベガス・インビテーショナル。渡邊が所属するジョージワシントン大は2戦2敗に終わった。
NBAドラフト候補選手に「そのプレーは知っている」。
強敵との戦いは、渡邊がアメリカに出てきた大きな理由だった。毎試合気を抜けない相手と対戦をすることは、大変ではあったが、それだけ楽しいことだった。
もちろん、対戦相手からの反応は、ブルーイットの握手のようにポジティブなものばかりではない。
たとえば昨年12月半ば、当時全米6位にランキングされていたマイアミ大と対戦したときのこと。渡邊をマークしていたのは、好ディフェンダーで、2年生ながら今年のNBAドラフト指名候補選手にも名前があげられるブルース・ブラウンJr.。
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前の試合から日程があいていたマイアミ大はジョージワシントン大のフォーメーションを徹底的にスカウティングしていたようで、渡邊は思うように攻撃させてもらえなかった。フィールドゴール12本中、ネットをくぐったのはわずか3本、平均を下回る9点に終わった。
「僕のプレーは全部読まれていた。僕がシュートするオフェンスをコーチがコールしてそれをやっても、必ず読んでいて、『そのプレーは知っている』みたいなことを何回も言われた」と渡邊は振り返る。
「そういうトラッシュトークを言われるのは慣れているし、もともとそういうことはあまり気にしないんですけれど、実際にプレーは読まれていた。完璧に抑えられて、自分が打ったシュートも無理に打たされたシュートが多かった」
NBAスカウトは、対策された後の引き出しも見ている。
大学4年となり、名実ともに攻守のエースでリーダーとなった渡邊は、どこと戦うときでも対戦相手にとって一番のターゲットだ。フォーメーションや得意なプレーはすべて研究され、それを抑える作戦を取られる。
オフェンスの時だけでなくディフェンスの時も、自分の手の内を知られていることを痛感することが増えた。たとえば、ディフェンスで相手に抜かれても、諦めずに最後まで追いかけ、長い手足を生かして相手のシュートをブロックすることが多いのだが、強敵との対戦では特に、それすら読まれ、かわされてしまう。
それだけ徹底マークされた中でも、渡邊は常に結果を出すことを求められている。今季のジョージワシントン大は若く、経験が浅い選手が多く、試合に勝つためにも渡邊が活躍することが絶対条件だ。
それだけではない。NBAスカウトたちは、相手から対応されたときにどれだけ適応できるか、どれだけ引き出しを持っているのかも見ているのだ。
「アメリカのディビジョンⅠというレベルで、相手に研究されているというのは、相手も自分のことを警戒してくれている証拠。そこを打開できたときに新たな成長が待っているのかなというふうに思っているので。相手の研究のさらに上をいけるようにしていきたいです」