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男子バレー元エース33歳の新天地。
なぜ越川優はビーチに転向したか。 

text by

市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

PROFILE

photograph byMakiko Nawa

posted2017/12/12 11:00

男子バレー元エース33歳の新天地。なぜ越川優はビーチに転向したか。<Number Web> photograph by Makiko Nawa

屋内コートからビーチへ。越川の決断は何より、五輪への想いの強さからだった。

転向当初は不安ばかりだったが生活の基盤も立った。

 選考されなかったことは受け止められたが、出場はしたものの、何もできずに全敗した北京オリンピックへの心残りが越川の頭の中を占めるようになった。北京で目の前に立ちはだかった相手国の選手たちのように、メダルを目指して必死に勝負したいと思った。

「インドアでは目標は叶わなかったけど、自分がそんなふうに大切にしているオリンピックという大会に、挑戦し続けることが自分の信念だと思いました。そう考えているときに、ビーチバレーボールという競技が選択肢に浮かび上がってきたんです」

 同じバレーボールとはいえ、ビーチとインドアは全く違う競技と言っても過言ではない。気まぐれに向きを変える風や、強い日差し、そして砂の上で動くことにも、慣れるまでには時間がかかるだろう。しかし越川は前向きだ。

「転向を発表したばかりのころは、生活の不安のほうが大きかったですからね。チームと契約してきたこれまでとは違って、どうやって生活すればいいんだろうって……。でも2カ月で、なんとかそのめども立って、今は生活の基盤ができつつありますから」

オリンピックで戦うとともに叶えたいもう1つの夢。

 '15年、トヨタ自動車がビーチバレーボール部を発足させ、話題となったが、ほとんどの選手は働きながら、休日を練習日に当てたり、個人でスポンサーを探して活動している。仕事と練習の両立ができず、競技生活を諦める有望選手は極めて多い。それが、日本の強化が遅れる大きな原因にもなっている。

 そういったビーチバレーボール選手が抱える問題や、置かれている環境を、自分が注目を集めることで少しでも改善したい。ビーチバレーボールの実情を目の当たりにするうちに、オリンピックで戦うこととともに叶えたい越川のもう一つの夢になった。

【次ページ】 転向3カ月目にして準決勝進出という異例の成果。

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