第94回箱根駅伝(2018)BACK NUMBER
今季学生最強ランナー、
順大・塩尻和也が目指す道。
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byAFLO
posted2017/12/07 11:00
塩尻(右)は1年時からエース区間の2区を務める。3度目の箱根路ではどんな走りを見せるか。
「駅伝では個人で少しでも爪痕を、結果を残したい」
塩尻は群馬県の伊勢崎清明高校の出身。決して駅伝強豪校とはいえない同校で陸上競技を始めた。そして1年生の秋に3000m障害で県の新人戦で優勝。関東大会へ進んで3位入賞を果たしたのが、自信を持てるようになったひとつのきっかけだったという。
「このままひとつずつ段階を踏んで力をつけていけば、3年生になれば目標にしているインターハイ出場も果たせるかな、と思えるようになりました」
だが、その目標を2年生であっさり達成すると、3年時には日本選手権にも出場して7位入賞。さらに世界ジュニア代表にも選ばれ、9位という成績を残した。
「今はトラックでも駅伝でも、どちらかに絞るということはせず、何でもやっていこうと考えています。それは高校時代から同じですね。高校時代も強豪校ではなかったので、駅伝では個人で少しでも爪痕を、結果を残したいと思ってやっていました。
高校時代に得意にしていた3000m障害は思い入れのある種目だったので、進学する際にはそれを駅伝と両立できる大学として順大を選びました。大学に入る時は学生のうちに種目を絞っていこうとも考えていましたが、実際やってみると3000m障害もまだ記録を伸ばせるなと思った。なので、当分は駅伝と両立していこうと考えるようになりました。理想はロードとトラックをずっと両立させて行くことですが、もしどちらかに絞るようになってもこの経験は無駄にならないと思っています」
五輪出場も「もっと走れたのではないか」と。
五輪に出場したことに対しても浮かれるような気持ちは生まれなかったという。自分のイメージの中では、「もっと走れたのではないか」という思いもあった。どんなレース展開になってもそれに合わせてキッチリ走る世界のトップ選手を見て、器用さや調整能力の高さを実感した。
「リオ五輪に出場したことで、日本のレースだけではなく、いかに海外のレースに対応できるかが重要だと考えるようになりました。実際自分がそこでは力を発揮できなかったので、コンディショニングやレースでの駆け引きに関してはまだ自分には力が足りていないと実感しました。でも、そういう力は一足飛びには身に付かないものだし、今までも段階を踏んで力をつけてきているので……。
早く世界の舞台で勝負できるようになりたいけど、そこで焦ってケガをしてしまったら進歩が鈍る。今のうちに一歩ずつ力をつけていくことが大切だと思っています。ただ、最近はインカレなどでも留学生が引っ張ってそのまま逃げ切られてしまうレースが多いので、そういったレースをさせないようにするためにも常に前に出ることは意識しています」