なぜイニシャルでもない「S」のペンダントを？

　ダイヤモンドがちりばめられ、力と成功を象徴したデザインが人気だったため、あいにく売り切れていた。店長が気の毒に思っていると、筒香はちょっと考えた後に、同じ棚に並んでいた「S」を手に取ったという。

「これ、つけさせてもらっていいですか？」

　店長は頷いたが、内心では首をかしげていた。TSUTSUGOHの「T」でもYOSHITOMOの「Y」でもない。では、何の「S」なのだろうか、と。

　しかも、それをプライベートのみならず、グラウンドでも着用するつもりだという。帰り際に店長は思い切って聞いてみた。どうして「S」なんですか？

　すると、筒香は真顔で言ったという。

「スーパー・ゴウになりたいんですよ……」

「ダイヤモンドの他に星がデザインしてあるんです」

　筒香は8月末から調子を落としていた。チームもCS出場権確保が微妙な状況だった。現状を打破するために文字通り、スーパーな力を手に入れたい。侍ジャパンの4番を打つほどの打者は、そういうことを考えるものなんだな、と店長は理解した。

　それから間もなく、筒香は復調した。ポストシーズンに入った10月からは手がつけられない状態になっていった。そのバットに導かれたチームもあれよ、あれよという間にCSを勝ち抜き、19年ぶりとなる日本シリーズの出場権を獲得したのだ。

　そして、野球好きの店長はその姿を見ながら、もう1つ、あることに気づいた。

「あのペンダントヘッド、ダイヤモンドの他に星がデザインしてあるんですよ。ああ、そういえば、ベイスターズのマークも星だったなって……」

【次ページ】　筒香はすでに「スーパースター」の資質を持っている。