プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ケインのワンマンチームではない!
レアル撃破トッテナムが見せた地力。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2017/11/04 09:00
ストライカーとしてワールドクラスに上り詰めつつあるケイン。スパーズ愛を貫くのか、それとも……。
「ワールドクラスだと証明するための舞台」
それはトッテナムも同様で、ポチェッティーノが「必殺の仕事ぶり」と評するケインがいるといないとでは大違いである。
10月28日のユナイテッド戦、1トップで先発したソン・フンミンは精力的な動きを見せたが、相手DF陣が恐れをなしている様子は窺えなかった。1トップの背後に構えたアリも精彩を欠いた。
対照的にケインが出場したレアル戦では、アリが相手ゴールへの脅威となり、ゴール不足が指摘されて久しいエリクセンもネットを揺らした。同じ3-5-1-1システムで戦ってはいても、ミスパスすらケインのもとに収まることでチームの自信の源となっていた。
ケイン本人は、「ワールドクラスだと証明するための舞台」と位置付けて今季のCLに臨んでいる。早々にグループステージ突破が決まったトッテナムの進撃が続けば、ケイン獲得に関するレアルの興味も獲得意欲へと変わっていくことだろう。2億ポンド(約300億円)を下らないと見られる移籍金も、レアルがその気になれば現実味を帯びる。
ケインの去就が噂されるからこそ、タイトルを。
ケイン自身、去就については今のところ無難かつ曖昧な発言を繰り返している。海外移籍を「あり得ないとは言わない」としつつ、ユースからのトッテナム一筋路線を「貫いてみたい気はする」とも言っている。だが、本当にレアルからラブコールが届けば気持ちが傾かない選手の方が少ない。ケインのように、国内外でのタイトル獲得という目標が、バロンドールという個人タイトルをも含む野心家であればなおさらだ。
だからこそトッテナムは、少なくともリーグかFAカップのどちらかで優勝を成し遂げる覚悟で戦い抜く必要がある。その間には、再発しやすいハムストリングの怪我などでまたケインが欠場を余儀なくされる試合もあるだろう。2年連続で優勝争いに敗れた昨季は、ケインが離脱していた約1カ月間、リーグ戦で2勝しかできなかったし、CLでもレバークーゼンとの2試合で勝ち点1しか奪えずにグループステージ突破が難しくなったからだ。
今季こそ、ケイン欠場となっても実力を発揮する一層の決意が、チームメイトたちに求められる。
シーズン終了後、「ケインのトッテナム」の正否ではなく「トッテナムのケイン」の去就が最大の話題となる来夏を避けるためにも。