バスケットボールPRESSBACK NUMBER
アメリカからBリーグ逆輸入、田渡凌。
苦戦中の横浜で感じる生きがいとは。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/11/03 08:00
田渡はユニバーシアード代表に選ばれるなど、今後の日本バスケ界を背負っていく有望株の1人だ。
写真を撮ってほしそうな女の子ファンにも……。
アメリカ帰りということで誤解されがちだが、田渡は日本に馴染めない感覚の持ち主ではない。チームが勝つために最善の方法ならばあえて空気を読まないことはできるが、空気の読めない人間ではない。
試合後、コートを離れたところで先輩が帰るときには、1人ひとり、きちんと挨拶をする。先輩が連れている子供にも気さくに声をかける。
ファンと交流するイベントに参加した時には、こんなこともあった。小さな女の子がカメラを持って、田渡の方を何か言いたげに、でも言い出せずに視線を向けていた時にはこんな声をかけた。
「ねぇ、君と一緒に写真に撮ってもらってもいい? お願い!」
チームが勝つために必要なことがあれば、遠慮することはないし、その情熱もある。一方で、繊細な感覚を持ち合わせている人間なのだ。
厳しいからこそ、生きがいもやりがいもある。
前述の通り、チームは怪我人が相次ぎ、勝ち星は思うように伸ばせない。
予想以上に苦しい状況なのではないか。そう思われてしまいそうなものだが、田渡は力を込めてこう話した。
「厳しいからこそ、考えるし、悔しいし、時にはイライラもします。でもその分、勝った時というのはファンの人たちもすごく喜んでくれるし、僕も嬉しいし、生きがいもやりがいもあるんですよね。そんな気持ちを味わえるのは、こういうチームだからこそです」
若いうちの苦労は買ってでもしろ。24歳のルーキーは、自ら苦しい環境に飛び込んだのだ。だから、揺らぐことのない決意がある。
「もちろん、順調に勝てたら一番良いですけど、むしろ僕は勝たせるために来たわけですから。チームがどうやったら、勝てるのかというのを考えてバスケをしていかないといけないと思っています」