バレーボールPRESSBACK NUMBER
ドイツ移籍、バレー柳田将洋に直撃。
「成長できる保証がなくても……」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2017/10/30 08:00
コート内に限らず1日24時間が日本での生活と全く違う。そこにこそ柳田はバレーボール選手としての楽しさを感じているようだ。
「僕自身、必要だと思って海外に来ているけど」
今季は試合に出られることを重視したこともあり、昨季11チーム中7位だったビュールを選んだが、下位チームにはそれなりの理由がある。柳田は海外移籍のジレンマに直面している。
「環境が整ったチームほどレベルが高いと思うけど、そういうところに日本人が最初から入って行くのは難しいと思うので、少しずつステップアップしていかなきゃいけない。ステップアップと言っても、僕らは大学に入ってからなので、他の国の選手たちよりもう出遅れている。だから僕は海外1年目からスタートダッシュぶっちぎっていくぐらいの準備をしなきゃいけないんですけど、それができていなくて、体が少し小さくなっているのが現状です。
僕自身、必要だと思って海外に来ているけれど、一概に海外がよいと言えるのか、不確かな部分があると感じています」
ボール練習についても、今年全日本でフィリップ・ブランコーチの緻密な指導を受けてきた柳田にとっては物足りなく映ることもある。
チームメイトのほとんどが身長2m以上のため、高いブロックに対する楽なスパイクの決め方をつかめてきていたり、フランクフルトのような強力で個性的なサーブを実戦の場で多く経験できることは間違いなくメリットだ。ただ、海外に行けば自動的にレベルアップできるというのは幻想だと実感している。
成長できますという保証はないけど、充実感がある。
それでも、柳田の表情に後悔の色は微塵もない。「来てよかった」と決して強がりでなく、言い切る。
「必ずしも全部成長できますという保証はないし、むしろ落ちている部分もあるかもしれない。でも、結果的に今自分がどう感じているかというと“有意義”です。人生として。ほとんどバレーボール=人生になっているから、そのバレーボールを通じて人生の環境が今変わっていて、変化した生活にすごい充実感を感じている。だって新鮮じゃないですか。言葉とか、できなかったことができるようになってきたり、日本とは違う人や文化、価値観に触れられる。
バレーボールでの目標は、毎年代表に選ばれることだし、オリンピックに絶対出たいし、そこは忘れたくないことだけど、それとはまた違った面白さがあるとオレは今感じている。オリンピックだって、人生ありきだし。
自分が望んでいるクラブに入るとかいうことは、まだ来年や再来年の話。やっと海外の市場に自分が出てこられたばかりなので、今季は我慢だと思うし、それも自分が求めていたもの。来年頑張るために今年頑張る。その繰り返し。自分が頑張ればもっといいところに行けるし、逆にダメだったらここにもいられない。それが日本の企業チームにはないところだし、そこも面白いところ。その中で、自分がどこまでできるのか」