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あなたは吉村祐哉を知ってますか?
15歳で渡欧し「第2のSHIBASAKI」に。
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byCDT Oficial
posted2017/10/29 09:00
吉村祐哉の成功は本人の意欲の為せる業だが、彼の才能を拾い上げられなかった日本の育成体制も再考の余地があるだろう。
「第2のSHIBASAKI」として10番を背負う。
その後も吉村は、ユース契約のラージョで主力として成長を続けた。そして今年7月21日に、柴崎岳が昨シーズン所属したCDテネリフェと契約を結ぶ。B契約ながら、与えられた背番号は「10」。
トップチームへの昇格を見越しての契約内容は、評価の高さをうかがわせた。「第2の“SHIBASAKI”に」。カナリア諸島のサポーター達は、出色のパフォーマンスでクラブに熱狂をもたらした柴崎と吉村の姿を重ねた。
迎えた今シーズン。9月2日のサンタ・ウルスラとの一戦で、吉村は後半開始からトップ下として出場を果たす。翌節以降は、主にトップ下、左サイドを主戦場に前線のレギュラーとして、テルセーラ(リーガ4部)で上位に位置するテネリフェの攻撃のタクトを振るう。
そんな吉村の、海外組としては異端のキャリアはどのように始まったのか。
スペインサッカーの常識の中で育ってきた利点。
吉村は決して体躯に恵まれた選手ではない。身長は175cm。だがスペイン人や各国の代表クラス選手と比べると、体型は明らかに線が細い。
それでも中盤のあらゆるポジションをソツなくこなす戦術眼と、ほぼ全てのプレーを左足のみで完結させられる高い技術、そして運動量の多さを武器にポジションを勝ち取った。
吉村のエージェントを務める門田直輝(スペインサッカー協会公式仲介人)はこう話す。
「2011年以降、リーガで誰もが認める活躍をした日本人選手はほとんどいません。それは、技術的に足りないというわけではなく、スペインと日本サッカーの“常識”の違いに適応するのに時間が必要、というのが私の意見です。それほど両国のサッカー観の違いは大きい。
ただ吉村の場合は、時間をかけてスペインサッカーに慣れてきた土壌があります。それもあって、“単に上手い”ではなく、“危険”な選手と評価を受けた。だからこそ、どんな選手なのか興味がある、という打診をいくつかのクラブからもらえたのだと思います。
日本人としての特徴を活かしつつ、スペインの価値観を肌で感じてきた経験値をプラスに転換させた。満足に出場機会を得られなかったからこそ、逆に、高いレベルで結果を追い求めることが可能なメンタルが形成されたのではないでしょうか」