ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太がついに、ついに世界王者。
次は「僕より強いチャンピオン」と。
posted2017/10/23 11:50
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBA世界ミドル級タイトルマッチが22日、両国国技館で行われ、ロンドン五輪金メダリストで挑戦者1位の村田諒太(帝拳)が王者アッサン・エンダム(フランス)に7回終了TKO勝ち。5月の王座決定戦で判定負けしたエンダムに雪辱を果たし、日本人選手として'95年の竹原慎二氏に次ぐ2人目となるミドル級世界タイトルを獲得した。
村田が1-2判定で敗れ、WBAがエンダムの勝利としたジャッジ2人にサスペンド処分を科すという異例の第1戦から5カ月。前戦で「自分の力が通用するか半信半疑だった」という村田は、ダイレクトリマッチで自らの力を疑うことはなかった。
初回の攻防から自信に満ちていた。ジワリと前に出てエンダムを追い込むと、右ストレート、ボディブローを叩き込む。エンダムは左ガードを上げて左に回り、あまり距離を取らず、接近するとクリンチに逃れた。すべては前回の試合でダウンを喫した村田の右を防ぐためだったが、先手を取って攻める村田が主導権を握るまでに時間はかからなかった。
シンプルに攻撃するのが最も有効という確信。
村田の自信の源は、ハイガードでエンダムの攻撃をシャットアウトできる、ということが一番大きかった。
「(再戦のやりやすさは)ブロッキングで通用する相手だったということ。ブロックして壊されてしまう相手だったらそれはできないですけど、自分の強いところが生きるということが分かっているのは大きかった。打ち終わってガードしっかり上げて、ブロックの上なら倒れるパンチじゃない」
つまり武器にしている“鉄壁のガード”を掲げて圧力をかければ、エンダムの効果的なパンチは絶対にもらわない、という自信を第1戦で得ていたのだ。村田は試合前の取材で再戦の意気込みを問われると「ガードを上げて前に出て、強いパンチを打ち込むだけです」と何度も口にしている。それは「細かいことを考えても仕方がない」というニュアンスにも聞こえるが、実際のところ、そうやってシンプルに攻撃するのが、エンダムに対して最も有効だと確信していたのである。