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デムーロ、戸崎圭太が語る騎乗哲学。
「競馬、難しい」「ゾーンに入った」
posted2017/10/19 11:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Keiji Ishikawa
普段、馬券はめったに買わない。だって、当たらないから。でも、当ててみたい。GIの後に、いつもほくそ笑んでいる競馬担当デスクが羨ましい。
というわけで、スポーツ誌編集者の特権を活かして、Number937号に掲載したミルコ・デムーロ騎手へのインタビュー取材の最後に、質問してみた。
パドックを歩いている馬の中から、勝てる馬を見極めるには、どこを見ればいいですか?
イタリアの名手は、ちょっと困ったような笑顔とともに、語り始めた。
「難しい質問ですね。僕も何回か考えたことがあります。でも、僕が仮に馬券を買えたとしても当たらない(笑)。難しいです。良い具合の馬を見分ける方法として、まず大事なのは綺麗な馬であること。シャイニング。光ってる。そして、お腹が大きすぎず、細すぎず、バランスがいいこと。リラックスしていて、動きが柔らかいことも大事ですね。でも、パドックで良くても、返し馬になるとすごくテンションが上がったり。やっぱり競馬、難しいです(笑)」
「良い馬は、ゲートに入る直前に心臓が」
本馬場に出て、大歓声を聞いた馬のテンションはどうなるのか。騎手は、自身の「膝」で感じているのだそうです。
「馬はすごく敏感です。心臓の音、振動が、足に伝わってくるんです。ドン、ドドンって。特にGIのようなビッグレースでは、よく動く。良い馬は、ゲートに入る直前にドンッ、ドンッて心臓が動き出します。それまでは、おとなしい。パドックや返し馬のときに心臓をたくさん動かすと、どんどん力を使っちゃいますから。良い馬は、すごい。さすがです」
返し馬からゲートが開くまでの、トップホースに跨るトップジョッキーにしかわからない、特別な感覚。