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日本一へ「やられたままはイヤ」。
千賀滉大、タイトルより登板の信念。
posted2017/10/13 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
すんでの所で、スルリとこぼれ落ちかけた自身初タイトルが手の中に戻ってきた。
ホークスの千賀滉大が今季13勝4敗、勝率7割6分5厘で「勝率第一位投手賞」を獲得した。
10月6日のバファローズ戦(ヤフオクドーム)。今季レギュラーシーズンの最終登板に臨んだが、立ち上がりに小谷野栄一にタイムリーを浴びていきなり先制点を献上した。5回には若月健矢にプロ初本塁打を許すと、続くT-岡田にも連続アーチを浴びた。この時点でスコアは0-3。ホークスはその裏に反撃するも、千賀が6回3失点でマウンドを降りた時点ではまだ1-3とビハインドの展開だった。
もし、このまま敗戦投手となれば、エライことになっていた。勝率7割2分2厘となってしまい同僚の東浜巨に抜かれて1位から陥落する危機にあったのだ。言い換えれば、この日の先発を回避して今季はもう登板しなければすんなりとタイトルを獲得できたことになる。
チームの先輩で同じ先発投手の和田毅は「止めましたよ。だって、タイトルですから。僕なら投げない(笑)」ときっぱり言い切った。
工藤監督らに登板回避を勧められても「大丈夫です」。
工藤公康監督や投手コーチも登板回避を勧めた。しかし、千賀は「いえ、大丈夫です」と首を横に振るだけだった。
タイトルよりも大事なもの。千賀にとって、それは一体何だったのか。
「やられたままはイヤ。いい形でCSに入りたいんです」
決意を語る表情はとても険しかった。この前の登板の9月25日のイーグルス戦(ヤフオクドーム)は散々な結果だった。序盤から失点を繰り返し、3回にはウィーラーにとどめの3ランを浴びるなどして今季ワーストタイの7失点を喫した。千賀は何度もマウンド上で茫然となった。