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片岡治大の引退と“ともあきさん”。
「人見知りのあいつがこれだけ……」 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byKyodo News

posted2017/10/08 09:00

片岡治大の引退と“ともあきさん”。「人見知りのあいつがこれだけ……」<Number Web> photograph by Kyodo News

片岡の語り草と言えば、2008年日本シリーズの好走塁。佐藤から受けた教えは、ひとつひとつのプレーに生きていた。

「人見知りのあいつがこれだけ信じてくれた」

 度重なる故障に泣かされて、志半ばで球界を去る片岡について、佐藤に質問をすると彼はこう振り返った。

「(自主トレは)他の誰よりも一番やっているくらいきつかったと思いますよ。当時のうち(ライオンズ)のキャンプも結構きつかったと思うんですけど、あんなのへっちゃらなくらいやっていましたから。じゃないと(キャンプで)練習にならないですからね。だからあいつはあいつで頑張ってきたと思いますよ」

 現役を続けるか否かの相談も、早い時期から片岡本人にされていた。

「僕は彼の現状をずっと知っていたので……それ(引退の感じ方)は他の人とは違うかなって思います。人見知りのあいつがこれだけ信じてくれたんでね。そこは大事にしたいなって思います」

 2人で過ごした思い出を、胸にしまい込むようにそう言った。

 今年も多くの選手たちが、所属する球団から戦力外通告を受けた。自分で退路を決められる選手は、この世界では本当にひと握り。佐藤はそんなことも言いたかったのだろう。だから片岡の13年間の現役生活についても、残念がると言うよりも、彼の苦労をねぎらうようにこう言葉を紡いだ。

「自分で選べるだけ、それだけ頑張ったからいいんじゃないですか」

 そこから先については多く語らなかった。それは辛い日々も本音でぶつかってきた2人の中だけで大切にしたい、言わば神域と呼べる場所だからだ。そして筆者との別れ際にこう佐藤は言った。

「でも(片岡が)早めに相談してくれて本当に嬉しかったですよ」

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