相撲春秋BACK NUMBER
日馬富士が凝縮された優勝翌日会見。
「いい見本と基本になってあげたい」
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2017/10/02 07:00
激戦を制して9度目の本場所優勝を果たした日馬富士。負傷者続出の秋場所を支えきった。
横綱の重み? そこまでは深く考えてない。
そう言うと、日馬富士は深呼吸するかのようにフーッと大きく息を吐いた。録音したICレコーダーからは、時折、荒い息使いや、痛みを堪えているのだろう「チッ」と小さな舌打ちの音も聴き取れていた。
――「まだまだ俺はやれるぞ、まだまだ長く相撲人生を、横綱勤められるぞ」という気持ちに、自信になりませんか?
「なりませんね(一同笑い)」
――どうしてですか?
「うーん、どうしてかな……。今だけを精一杯頑張って行きたい感じですね」
――ひとり横綱として15日間出られて、改めて横綱の地位の重みを感じるようなことはありましたか?
「なんですかね……重み? そこまでは深く考えてない。ま、プレッシャーとかいろいろ目に見えないものがいっぱいあります。それは横綱になった者しかわからないものがあって、それをどうやって説明したらいいのかわからないです」
――ずっと家族も支えてくれたと思うんですが、(「(妻とは)別れました」と即答する日馬富士)昨日(優勝記念撮影の支度部屋に)いたじゃないですか。(「あ、そうか」と笑う日馬富士)ご家族には改めて何か言われましたか?
「ま、おめでとう、かな」
――若手が突き上げて来てると思うんですが、肌で感じることはありましたか?
「そうですね、若い力士が上がって来てる感じしますね、はい」
――それに対しては何かありますか?
「まあ、いい見本と基本になってあげたいなって。相撲道は昔の先輩から受け継いで後に渡して行くものだから、しっかりといい背中を見せてあげたいと思います」