炎の一筆入魂BACK NUMBER
離脱者さえも連覇の戦力にした広島。
選手層より大切な「カバーする力」。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2017/09/25 11:50
シーズン半ばからは独走体勢に入り、他を圧する形で優勝を決めた広島。それはまさに、総合力としか言いようがない優勝だった。
代走という難しい役目をまっとうした野間。
誰かが抜けても、誰かが補った。
たとえば代走の切り札として存在感を発揮した野間峻祥もそう。まだ3年目の24歳。レギュラーを目指す若手も、今年のチーム構成上、立場は代走と守備固め。昨季まで同ポジションの絶対的なジョーカーとなっていた赤松の「代役」の意味合いが強かった。
難しい役割を任され、失敗しながらも、徐々に爆発的なスピードでグラウンドを疾走した。9月5日阪神戦では同点の7回、2死一塁から代走で出場すると、2球目で二盗成功。河田雄祐外野守備走塁コーチが「スタート、中間走、スライディング、すべて良かった」と認める走塁から、安部友裕の右前打で一気に本塁を陥れた。
途中出場ながら本来の力を最大限に発揮できるのは、昨季まで赤松とともに過ごした時間がある。「赤松さんの動きをずっと見てきた。試合展開を読みながら準備するイメージはある」。6回から体を動かし、出番に向けて逆算して準備を進める。ストレッチからアップし、全力疾走。そしてベンチで出番を待つ。もちろん、映像で投手の癖は確認している。
赤松は笑いながら後輩を絶賛する。
ワンプレーが試合の流れを大きく左右する試合終盤の一瞬に、すべての力を爆発させるための準備は、赤松から学んだ。
後輩の働きを、リハビリ中の赤松は笑いを交えながら絶賛する。「もう俺なんか余裕で超えているでしょ。話をしてもしっかり考えているし、ちゃんとしている」。脚力や状況判断、盗塁のスタートを切る勇気を含め、成長を素直に認める。
真面目に話す自分を少し照れくさそうに「もう(自分の)ポジションないよ。野間がレギュラーになってくれたら、空くんだけどね」と笑う。それでも最後は「失敗を恐れずに、失敗して欲しい」とさらなる成長に期待する。