セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
モヒカン頭なのに常識人の若頭。
ハムシクと武闘派ナポリ、結束せよ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/09/22 07:00
昨季までの在籍10シーズン、リーグ戦では357試合に出場して93得点を記録。マラドーナがいた1990年以来のスクデットを狙うチームの“顔”だ。
「過去と比べて、今季のチームが一番強い」
小兵FWメルテンスがゴールの稼ぎ頭として大化けし、助っ人用心棒カジェホンの切れ味も増した。FWインシーニェは名実ともに攻撃の屋台骨を背負う斬込み隊長として成長し、ゴール前にも守護神レイナをはじめ強面が居並ぶ。
この夏の始動日には、11人もの代表組が自主的にオフを切り上げ、免除されていたはずの全体集合に馳せ参じた。サマーキャンプで汗を流す頼もしい仲間たちを前に、30歳になった主将ハムシクはこう思わずにいられなかった。
「過去と比べて、今季のチームが一番強い」
一方で策士である親分は、開幕後に露見したチームの弱点を見極めている。
ナポリの今夏補強は最小限に留まり、スタメンの顔ぶれは昨季から一切変わらない。昨季後半戦で見せた脅威の勝ち点ペースが示す通り、彼らの攻撃フェーズでのオートマティズムは完成の域に入った。
ただし、プレーの純度が増せば増すほど“自分たちのサッカーができるときにしか思うように勝てない”というジレンマも生まれてきた。どんなに荒れた展開でもどんなに小狡い形でも、とにかく勝ち点3をもぎ取る常勝ユーベとは対照的だ。
叩かれるのは承知の上でダービーでも先発。
苦手な飛行機移動に耐えたウクライナ遠征でCL初戦に敗れた後、サッリはチーム状態を分析した。走れていないわけではない。公式戦6試合で奪った14得点のうち、実に11得点は後半に奪っている。つまり、息切れすることなく後半にラッシュをかける持久力はチームにしっかり備わっているのだ。
「8月中旬のCLプレーオフ初戦に一度ピークを合わせたため、その反動がきている。底を打っているのは体力ではなくメンタルの方だ」
主将のスランプも原因は精神面にある。責任感の強いハムシクのことだ。プレーオフ突破に全神経を集中させて消耗してしまったのだろう。今はメンタルを回復させる時期とも言える。親分は「(先発から外して試合勘を失わせるより)あくまでスタメンでプレーさせながら調子を取り戻させる」と、4節の“カンパーニャ州ダービー”でもやはりスタメンで送り出した。もし不出来であれば、起用法を叩かれるのは承知の上だった。