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「オレがいない方が強いんちゃうか」
苦しんだ西武・森友哉、ついに復活。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/09/21 07:00
4年ぶりとなるクライマックスシリーズ進出を決めた西武にとって、森の復帰は非常に大きい。
自暴自棄気味の森にコーチが与えた課題。
自暴自棄気味になっている森に星コーチが与えたのは、練習メニューを自分で選ぶという課題だった。
「例えば3日間、残留組の練習があるときは、僕が“案”と大きく書いたメニューのプリントを渡しました。この中からやりたいことを選んで、と。『こういう練習がしたいんだけど、その方法がわからない』というときに、その方法を提案する形を取りました。森には自分の意思でやってほしかったからです」
ある日、森から「下半身を強化する練習がしたい」という要望が出た。「もっと素早い動きができるようなトレーニングをしたい」という森の言葉に、星コーチは近距離ノックを勧めた。レガース一式をつけ、やわらかいボールで至近距離からノックを繰り返す。ピッチャーのワンバウンドのボールを捕球する訓練と同時に、それは体の切れを出すことにも役立った。同時に、個人練習ではゴムチューブを引っ張るトレーニングで左手の握力を強化した。森の最大の魅力であるフルスイングを取り戻すためだった。
少しずつ、完全復帰に向けて前向きな気持ちがよみがえっていった。
岡田については「ライバルにもなれていないですよ」。
森は振り返る。
「僕が一軍にいない間に、岡田さん(雅利)がたくさん試合に出ていました。もちろん、うれしいんですよ。同期入団で、高校の先輩。普段から仲もいいですから。でも同時に、悔しいという気持ちも大きかったですね」
名前を挙げられた岡田は、森が故障離脱中、「森が戻ってきてからが本当の勝負だ」と話していた。そのことを森に告げるとこう苦笑した。
「ライバルにもなれていないですよ。シーズンの半分以上何もできなかった自分と、その間にたくさんの試合に出て、ピッチャーをリードして、いろいろな経験をしている。岡田さんはこの何カ月かの間にパワーアップしているから、今の僕では岡田さんの足元にも及ばないです」