話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
“ケンカ番長”井手口陽介の成長記。
遠藤のパス、今野の動きを盗んで。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/13 11:30
鮮やかなミドルシュートに大胆不敵な表情。井手口陽介はここ近年の日本代表にいなかったタイプである。
「めっちゃ参考になった」代表での今野の姿。
この時、井手口が反省として挙げていたのが、攻守のつなぎでのプレーだった。
ボールホルダーにアプローチをかけて、奪うことはできている。しかし奪った後、次の攻撃につながる展開のパスを出せずスローダウンしてしまい、チャンスにつなげることができないケースがあった。
展開力とつなぎのパスの精度―――。
これはガンバ大阪の長谷川監督から指摘されていた部分でもあったのだ。
リオ五輪後、こつこつと課題克服に取り組みつつも、思い悩むこともあった。だが、頭の中であれこれ考えていたことが吹っ切れた出来事があった。
今年3月のロシアW杯最終予選、アウェイでのUAE戦である。
ガンバからは今野が選ばれ、4-3-3のインサイドハーフとして出場。秀逸なプレーを見せ、ダメ押しのゴールを奪った。井手口は当時招集外だったが、その時の今野のプレーを目に焼きつけた。
「めっちゃ参考になりました。奪って、前につけて、さらに前に出て行く。ガンバでもやっていたし、分かっていたけど、それを代表で、しかも結果として見せてもらった時、自分も自分らしくもっとやらなって思った」
ガンバではいまや遠藤・今野以上の存在感。
井手口に追い風が吹いたのは、その後だった。
UAE戦で今野が負傷したことで、ガンバで試合出場のチャンスをつかんだのだ。縦パスに磨きをかけ、攻撃のテンポを上げ、自らも前に飛び出していくなど、長谷川監督が目指す素早く縦に攻撃するサッカーを体現した。そうして、自分なりの攻守のリズムをつかんでいったのである。今やガンバでは遠藤や今野以上の存在感を見せ、中盤を組むパートナーを選ばない柔軟性をも持ち合わせるようになった。
ハリルホジッチ監督はそんな井手口の成長を見逃さず、6月のイラク戦で先発起用。そして積み重ねた、ありったけの力を見せてくれたのがオーストラリア戦だった。