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日本がW杯を決めた日に90分出場。
内田篤人、とぼけた野心的な移籍。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/09/06 07:00
シャルケで信頼関係を築いたケラーの存在も、内田篤人にとっては大きな支えになっている。完全復活の時は近い。
スムーズな移籍は、内田にとってもプラスに。
8月、今季テデスコ体制のシャルケでの出場機会がないことを確認すると、素早く移籍への動きを始めた。18日の金曜日には契約解除を申し入れ、週明け21日月曜日にはウニオンでのメディカルチェック、入団発表という流れだった。
もちろんウニオン入団まで一筋縄ではいかない、苦しい時期もあったわけだが、それでもこの移籍自体は、特別にスムーズな印象を受ける。それは、周囲との円満な関係と人柄をも反映しているように見える。
ドイツでも人柄や性格は、選手獲得時には検討すべきファクターのひとつだ。今回の移籍劇をトータルで見ると、内田自身に好印象を他クラブ関係者も持つはずだ。今後のためにもプラスになる移籍だったわけだ。
会見から4日後の27日、日曜日。ホームのビーレフェルト戦で内田はベンチ入りを果たした。試合前にはスタンドに挨拶に行き、メンバー発表では特別大きな声援が送られた。
「誰だかわからないけどチームメイトに、お前のための声援だと言われたよ。スタンドの雰囲気は思ってたよりすごいなと」
そう驚き、喜んだ。
移籍、そしてベンチ入りで喜ぶ内田篤人ではない。
一方で、移籍を喜ぶ段階はもうすでに終わっていることを、言葉の端々から感じさせる。
「まあ、今日の出場は難しかったね。ディフェンスラインを変えるのはある程度余裕がないとできないし、接戦だとどうしても相手ロングボール増えるからね。俺よりも、でかいフォワードいたし。だから今日は、まあ出場はないかなと」
こちらとしては、公式戦でベンチ入りしただけでも一歩前進ではないかと感じてしまう。だがベンチ入りだけで満足していたら、現役選手ではない。
「大量リードしていたらチャンスはあったかもしれないけど、監督が決めることだし。まあ監督は俺のこと知ってくれてるから、性格もね。今日ベンチ入れてくれただけでもありがたいなと。だから来週、代表で試合間隔があくから、そこでちゃんと練習してからベンチ入りというほうが堅実という考えもあるだろうけど、いきなりベンチに入れてくれて雰囲気も見れたし。こういう選手がああいうプレーするというのもわかったし。ありがたいですよ」
雰囲気を感じるだけでなく、味方のプレーを把握するためのベンチ入りだと認識し、頭を働かせていた。