イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローの右袖に記された謎の暗号。
「おおぎ」「おう」と3日目の空白。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2017/08/30 11:00
26日には7回に代打で出場し、今季22本目の安打。2009年のグロードの21安打を抜く、代打での安打の球団新記録をマークした。
右袖につけられた「EVOLUTION」とは。
メジャーリーグ機構が企画した「プレーヤーズ・ウイークエンド」の意図は、次世代を担う若いファンの新たな開拓にあった。普段は細かく限定されている色合いの規定をこの3日間だけは取り払い、バットやスパイクなどは選手たちの好みの色に任せ、新鮮な感覚をファンに抱いてもらうためだった。
そして、背中の愛称とともにキーポイントとなったのが、全員が右袖につけた「EVOLUTION」(進化)と名付けられた記章だった。
記章には子どもから大人に成長していく段階の5人の打者が描かれ、「THANK YOU」と書かれている。『メジャーリーガーになる上で最も感謝すべき存在は?』という意味であり、その下には空欄が設けられ、選手自らがペンでその答えを書くことが求められた。
「おんくぎとかお」と「おんくとかう」?
多くの選手が両親や出身校などを記した。ダルビッシュが少年野球時代から日本ハムまでの所属チームを書き込めば、田沢は「BROTHER」(野球で出会った全ての仲間たち)と書いた。そして、イチローが書いたメッセージが冒頭のものだった。
『お1、ん5、く7、ぎ3、と6、か4、お2』
『お1、ん4、く6、と5、か3、う2』
ポイントはひらがなの横に書かれた数字。順番に並べれば2つはこのようになる。
「お・お・ぎ・か・ん・と・く」
「お・う・か・ん・と・く」
「おおぎかんとく」はオリックス時代の監督である故・仰木彬氏。登録名「イチロー」を生み出し、'00年オフにポスティングシステムでのメジャー挑戦を容認してくれた大恩人。言わば、メジャーリーガー・イチロー生みの親と言えた。
「おうかんとく」はソフトバンク現会長であり、'06年の第1回WBC代表監督を務めた王貞治氏。イチローが野球人として最も尊敬する恩人と言える。