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F1チームの急成長には日本人あり?
ドライバー不在もエンジニアが活躍。
posted2017/08/27 08:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
「あるチームが突然、速くなったら、日本人エンジニアが加入したと思え」
2014年から3連覇しているメルセデスのスポーティングディレクターのロン・メドウが、かつて教えてくれた言葉だ。
じつは、そのメルセデスで現在チーフデザイナーを務めているエンジニアも日本人なのだ。メルセデスは、そのほかにも4人の日本人エンジニアを擁している。そのメルセデスの前に4連覇していたレッドブルのチーフデザイナーも日本人だ。
現在10チームあるF1界で日本人エンジニア、またはメカニックが存在しないチームはフェラーリだけ。その中で、最も多くの日本人が携わっているチームが、昨年から今年にかけて好調のフォース・インディアだ。そのフォース・インディアに、7人目の日本人として招かれたのが、神野(こうの)研一だ。
亜久里の日本GP3位を見てF1を目指し、単身渡欧。
神野がモータースポーツに興味を持ったのは中学生の時。鈴木亜久里が1990年の日本GPで3位表彰台を獲得したレースを見て、F1を目指した。
当初の夢はF1ドライバーになることだったが、カートを始めて間もなく、F1ドライバーになるだけの才能とお金がないことを悟り、断念。しかし、F1の世界で戦いたいという思いは捨てられず、日産自動車に就職した。
日産では車両運動性能に関わる部門に配属され、エンジニアとしての基礎を築いた。そして、数年前にF1のエンジニアを目指し、家族を残して渡欧する。
ヨーロッパでは、F1の仕事に関する情報が日本とは比べ物にならないほど豊富だ。
特に7つのF1チームがファクトリーを構えるイギリスでは、レースエンジニアリング学科を設置している大学に、F1チームのほうから就職説明会を開きに来るほど。就職する前にはインターンシップで、学生生活を送りながらF1チームで働く者も少なくない。