ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「自分のゴルフ人生嫌いじゃない」
岩田寛、米国での2年間を財産に。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2017/08/28 07:00
世界の頂点を視界に入れたわけではなかった。しかし岩田のような挑戦者がいることで、日本男子ゴルフの国際競争力が上がる。
正念場の戦いが大洪水、ハリケーンで中止になった。
例えば、シード獲得に向け切迫した昨季終盤戦でのこと。わずかでもポイントを獲得したい状況だったが、ウエストバージニア州での試合が大洪水により中止になった。
同10月の入れ替え戦では、フロリダでの最終戦がハリケーンの影響で中止になり、第3戦までの結果をもって終了。今季の出場優先順位は低いままだった。同じ境遇を味わった選手は他にもいるはずだが、中止になる最終戦直前、不調を嘆きつつ「あとはパターと運にかけるしかない」と言い残し、逆転への小さな期待を抱いて渡米した姿を思いだすと、やりきれない気持ちになる。
日本ゴルフ協会から出場停止処分を受けたことも。
また、母国のツアーとも摩擦があった。'15年秋、岩田は急遽参戦が決まった米ツアー開幕戦に出場するため、同週の日本オープンのエントリーを直前でキャンセル。日本ゴルフ協会(JGA)からは主催の日本オープンを含む年間2大会の出場停止処分('17年まで)を受けた。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)は今年、選手の欧米進出を支援するべく、日本ツアーのシード維持のための試合出場義務を事実上撤廃した。ただ、岩田の米参戦初年度となった昨年は規定改定前であり、日米往復を伴う強行日程を強いられた。
新しい一歩を踏み出す時に危険や困難はつきものだ。岩田はそのリスクの渦に飲みこまれ、「こっちで成功することを頭に描いてきた。差が激しくてボロボロです」とハートを砕かれた。
しかし岩田はいま、改めて思う。
この苦悶の経験は嘆くだけのものではなかった、と。
つらい時間ばかりだったはずのPGAツアーでの戦いには「(リスクではなく)僕はリターンしかないと思う」と言ったのだ。