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なぜ「断酒宣言」は無かったのか?
巨人・山口俊の傷害事件を検証。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/08/25 11:00
謝罪の記者会見を終え、席を立つ山口。復帰後、山口がどのようなプレーをし、どのように日常生活を送るのか……注目される。
出場停止、巨額の罰金……厳しい処分なのか否か。
過去の事例を考えると、今回巨人が下したシーズン中の出場停止と、推定だが1億円を超える罰金、減俸という処分は、あながち甘いというものではないだろう。
会見に同席した石井一夫社長は「罰金、減俸は高額なもので、かなり厳しい処分になっている。過去の出場停止処分に比べても最も厳しいのではと思う処分」とした上で、契約解除については考えていないとした。
「山口が極めて深く反省している。それと被害にあわせた相手の方に謝罪の気持ちを持っている。ファンの方を裏切ったことに対して、何か償わなければならないと考えていること、そういうものを感じて、当球団としても、山口もまだ30歳と若いですから、将来を潰してはいけないと考えた」
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こう最終的に今回の処分に至った経緯を説明している。
巨人としてみれば一昨年の野球賭博事件からまだ、それほど経たないうちに再び選手が起こした不祥事で、選手管理の甘さに弁明の余地はないはずだ。
その一方で選手個人の将来ということを考えたら、すべてを奪うのは適切ではないという判断だったわけだ。
ただ、決して軽いとは言えないこの処分に、世の中が厳しい目を向けるのには理由がある。
1億円の制裁金でも、3年間で年俸は7億5000万円。
山口は昨オフに中日との争奪戦の末に獲得した選手だったが、肩の故障で出遅れ、ようやく6月14日に一軍登板を果たして、復帰戦で白星を挙げた。しかしその後は成績、投球内容ももうひとつで、戦力的には大きな痛手とは見えない。
しかも巨人移籍で3年総額7億5000万円とも言われる大型契約を結んでいることも周知の事実だ。
1億円という制裁金は確かに膨大な額だ。それでも山口には6億円以上が残るというのが、世間の目なのである。
ただ、問題を最も大きくしたのは、実は山口の会見でのある言葉ではないだろうか。