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サニブラウンが世界陸上で得たもの。
メダルへの距離、新たな「仲間」。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2017/08/23 11:10
200m決勝で、足の痛みもあってか悔しそうな表情を見せるサニブラウン。しかし18歳で決勝の舞台に立ったことは十分に偉業だ。
オランダでできた、メダリストの仲間たち。
昨年、日本選手権直前に怪我をし、リオ五輪出場を逃し、自信を失った時期もあった。しかしオランダ短距離コーチのレイナ・レイダー氏に師事したこの8カ月、的確なコーチングに加えてメダリストたちからは帝王学を叩き込まれ、サニブラウンは心身ともに大きく成長した。
今大会では兄貴分のクリスチャン・テイラーが男子三段跳で、オランダのエース、ダフネ・シパーズが女子200mでそれぞれ連覇をしたほか、オランダでともに練習するチームのメンバーはリレー種目も含めて6つのメダルを獲得している。
「メダリストはプライド持って練習しているし、試合になるとしっかり集中する。オンとオフがはっきりしていると思います。でも自分はありのままの形で、自分のやり方で上を目指せればいいと思うんです」。
チームメイトを気遣う優しさ、一緒に高みを目指す楽しさもオランダで培った。
テイラーは連覇を決めると、ウィニングランもそこそこに200mのスタート地点までダッシュし、サニブラウンに声をかけた。
「(クリスチャンは応援に)来るだろうなと薄々は感じていたけれど、本当に来るとは思っていなかった。ちょっと緊張していたのが落ち着いた感じですかね。活をいれられた感じもしましたけど」と笑う。
サニブラウン、世界への挑戦は第2章へ。
足の痛みもあり、400mリレーには出場できなかった。しかし僻んだり、ネガティブに捉えず、メンバーをサポートした。銅メダル獲得が決まると、同じく控えに回ったケンブリッジ飛鳥と2階席から猛ダッシュで1階に降り、リレーメンバーに声をかけるために係員の制止を振り切ってグラウンドまで出て、一緒に喜びを分かち合った。
「全体通すといろいろあった中で、しっかり結果を残せたのはよかった。悔しかったところもあるので、今後につなげられるいい経験になったのかなと思う」
世界陸上の閉幕後の14日、サニブラウンはひとり、米国フロリダ州に向かっていた。15日にはフロリダ大学の新入生のオリエンテーションに参加し、翌週からは授業が開始する。
オランダでの7カ月、ロンドンの夏を経て、フロリダで新たな生活を始めるが、勉強も大学のチームの練習も、すべてが次の高みに向かうための大事な時間になるだろう。
ボルトが終わりを告げたロンドンで、サニブラウンの世界への挑戦は第2章を紡ぎ出した。次にどんな成長ぶりを見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。