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サニブラウンが世界陸上で得たもの。
メダルへの距離、新たな「仲間」。

posted2017/08/23 11:10

 
サニブラウンが世界陸上で得たもの。メダルへの距離、新たな「仲間」。<Number Web> photograph by AFLO

200m決勝で、足の痛みもあってか悔しそうな表情を見せるサニブラウン。しかし18歳で決勝の舞台に立ったことは十分に偉業だ。

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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AFLO

「北京大会はあっけなく終わった気がしましたが、今回は少し爪痕を残せたかなと思います」

 サニブラウン・アブデルハキームは世界陸上ロンドン大会をこうまとめた。100m予選では向かい風の条件下で10秒05の自己ベストタイ、200mでは18歳5カ月で同種目史上最年少、また日本人としては2003年パリ大会の末續慎吾以来の決勝進出という快挙だった。

 世界的にみても十分に戦った、そういう人が多いだろう。しかし本人は満足感や充実感と同じくらい悔しさも感じていた。

 もっとやれたはずだ。そのために練習してきたのに。結果を出せなければ意味がない。

 18歳の夏はちょっとほろ苦いものになった。

 8月5日に行われた100m準決勝で、サニブラウン陣営は勝負に出た。スタートの体勢を少し修正し、低く飛び出した。多くの選手が不満を漏らしていたスターティングブロックなど物理的な問題もあったのかもしれないが、この修正が裏目に出た。

 足がついていかず4歩目でつまずく。体がぐらりと傾いたが必死に立て直し、前を追った。しかし遅れは取り戻せず、10秒28で7位。

 ゴール後、うずくまって頭を抱えた。何度も繰り返し練習し、戦える手応えも感じていた。決勝進出ラインは10秒10。手中にしていた決勝はするりとこぼれ落ちた。

「下手したらメダルまでいけるんじゃないかと」

 報道陣の前に現れたサニブラウンの目は少し赤かった。

「悔しいですね。いける気しかしなくて、すごくもったいないレースをしてしまった」と反省ばかりが口をつく。

 予選では後半流しながらも10秒05の好タイムを出していた。

「予選で気持ち良く体が動いていたので、下手したらメダルまでいけるんじゃないかと思っていた。その点では悔しいという気持ちしかないです。油断ではないです。1本1本目の前のレースに集中していました」

 貫禄の走りというよりも、10代らしくない余裕の走りが、勝負となる準決勝を前に欲を出すきっかけになってしまった。

【次ページ】 いつもクールなサニブラウンが珍しく……。

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