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「糸井の補償でオリックスへ来た男」
金田和之が肩書きを返上するまで。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2017/07/31 07:00

「糸井の補償でオリックスへ来た男」金田和之が肩書きを返上するまで。<Number Web> photograph by Kyodo News

人的補償は選手への心理的な負担はあるものの、確実に「欲しい」と思われての移籍でもある。金田はその期待に応えられるか。

オリックスの選択は「来年戦力になれる選手」。

 オリックスの佐藤達也と親交のある桑原は、「タツさん(佐藤)と飯行くけど、一緒に行くか?」と金田に声をかけた。

「何も知らない状況だったので、本当に助かりました」と金田は感謝する。

 それをきっかけに今年1月には佐藤と、金田と同い年の高木伴の3人で自主トレを行った。そこから西勇輝や松葉貴大、赤間といった同級生に輪が広がり、無事にチームメイトの中に溶け込めたようだ。球場の通路で金田に話を聞いている最中にも、横を通りかかった西が変顔をして、金田の表情をほころばせていった。

 糸井の人的補償で誰を獲得するかを決めるにあたっては、ウエスタン・リーグで対戦して阪神の若手に詳しい田口壮二軍監督も交えて、昨年12月に会議が行われた。金田も話していたように、オリックスは左腕の層が薄いため最初は左投手を狙うと見られたが、最終的には「力のある、来年戦力になれる選手」(福良淳一監督)を優先し、右腕の金田に白羽の矢が立った。

150キロを超えるストレートで一軍に定着。

 請われての移籍とはいえ、新天地では1から自分をアピールしなおさなければならない。自他ともに認める金田の武器は、150キロを超える力のあるストレートだ。

「150ぐらいのまっすぐで、ガンガンおすピッチングができるようにしたいですね」と静かに、しかし力強く言う。

 春季キャンプではストレートやツーシームでアピールし、首脳陣から上々の評価を得ていたが、キャンプ終盤に右手中指屈筋腱炎で離脱してしまった。

 自身の予想より復帰に時間がかかり開幕には間に合わなかったが、4月28日のウエスタン・リーグ中日戦で今季初登板を果たし、5月23日に一軍に昇格。一度は降格となったが、6月15日に再昇格すると、威力のあるストレートで打者をねじふせる場面が見られるようになり、一軍に定着した。

 平井正史投手コーチは、「球が強いので、ある程度ストライクゾーンで勝負できる」と評価する。

【次ページ】 勝ちパターンの投手リレーに入り込めるか。

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金田和之
オリックス・バファローズ

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