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ノーザンライト前文科大臣・馳浩。
11年ぶりのリング復帰に思うこと。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/07/28 11:30
56歳のジャイアントスイング。グレート・カブキ相手に20回も回してみせた馳。
「ノーザンライト・スープレックス」の命名者は……。
この時点で、馳のフィニッシュ・ホールドとなる「ノーザンライト・スープレックス」は、まだ生まれていなかった。
馳が、受け身をとりにくい新しい投げ技を開発中ということを匂わせたので、名前が先行する形になってしまうこともお構い無しに、私はまだ見てもいないその技に勝手に「ノーザンライト・スープレックス」という名前を付けた。
「ノーザンライト」とはオーロラのことだ。オーロラに魅せられる人は多い。馳もオーロラの美しさに感動した1人だった。カナダの北の空に突然表れる幻想的な緑色のカーテン。それは形を変え、色も変えて、まるで魔法のようにうごめく、という。
馳が真夜中の雪の中で見たその美しいノーザンライトの話をやたらとするので、「じゃあ、その技の名前は『ノーザンライト』で行こう」となった次第だ。
美しかった、56歳でのブリッジ。
そして、2017年7月26日。
馳は後楽園ホールの雰囲気を楽しむように、長州力と藤波辰爾とタッグを組んで、グレート・ムタ、グレート・カブキ、TNT組と戦った。
カブキを十八番のジャイアント・スウィングで20回近く回して、喝采を浴びた。試合前は「10回以上回したい」と言っていたが、フラフラになっても必死に踏ん張った。
2006年8月、45歳の時の引退試合では歳と同じ45回も回して見せた。最多では1996年に小川良成を60回も回している。
ムタのシャイニング・ウィザードにもしっかり耐えて見せた。
跳ねてすっと起き上がろうとしたときは、思ったようにうまく浮かずに、バランスを崩して自ら苦笑した。体は正直で思ったようにはいうことを聞いてくれない。
それでも、ウェイトが増したTNTにきれいな裏投げを決めた。そしてフィニッシュはもちろん、あのノーザンライト・スープレックスだった。
56歳のブリッジはきれいだった。